幸福な物語、「I KILL GIANTS」から『バーバラと心の巨人』へ

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現在劇場で公開中の映画『バーバラと心の巨人』は、脚本ジョー・ケリー、作画ケン・ニイムラによるグラフィック・ノベル「I KILL GIANTS」を映像化した作品である。2008年にアメリカのIMAGEより発行され、2012年に国内で小学館より翻訳出版されたので、「I KILL GIANTS」を知っている方はいるかもしれない。

ジョー・ケリー作、ケン・ニイムラ画『I KILL GIANTS』(柳亨英訳、小学館、2012年)

アメリカで2017年に劇場公開されたが、小規模で、インターネットでの配信も同時に行われたため、決して大きく話題になった映画ではない。だが、これだけ原作コミックのもつハートを映像化した作品も稀なため、原作が気に入っている方には見逃さず、劇場の大きなスクリーンで見ていただきたい。

原作を知らない方に簡単に説明すると、10代の少女、バーバラは自称、“巨人殺し”をしており、常に奇異な行動や態度で、学校でも居場所がなく、まわりの大人や家族を困らせている。しかし新たに引っ越してきて友人となったソフィアや学校のカウンセラー、モル先生との交流でバーバラも少しずつかわっていく。しかし“巨人殺し”の準備は続けていくバーバラ。彼女の真意は果たして…

思春期の生きづらさ、理解されなさを“巨人”というメタファーに当てはめたのかと思いきや、そこにもひねりが加えられていて、悩みが多かったり、人生の蹉跌を経験したことのある人には何かが残る作品なのではと思う。

また、この作品を特別にしているのは、原作と映画の脚本、双方をジョー・ケリーが手がけているということ。原作コミックの原稿が完成したあとに映画用の脚本を書き上げたそうだが、コミックとしての完成度から、映像としての作品として、うまく変更された脚本になっており、それを映画監督のアンダース・ウォルターが見事に映像化している。グラフィック・ノベルとしても、映画としても、それぞれ完成度が高く(ニイムラにとって初の長編作品だったそうである)、それぞれでも楽しめるが、どちらも知っているとより味わい深い体験ができる、とても幸せな作品となっている。

余談だが、脚本のジョー・ケリー、作画のケン・ニイムラは撮影時にロケーションを訪ねたところ、監督に映画に出てみないかと誘われ、劇中に一瞬登場している。もし、ふたりの顔をご存知の方は是非探してみてほしい。

映画『バーバラと心の巨人』公式サイト
原作コミックス「I KILL GIANTS」

製作:クリス・コロンバス 監督:アンダース・ウォルター 脚本:ジョー・ケリー 出演:マディソン・ウルフ、ゾーイ・サルダナ、イモージェン・プーツ
原作:「I KILL GIANTS」ケン・ニイムラ(画) / ジョー・ケリー(作) 2017/アメリカ/106分/英語/シネスコ/ドルビーデジタル/原題:I KILL GIANTS/G 公式サイト:barbara-movie.jp
提供:パルコ/REGENTS 配給:REGENTS/パルコ © I KILL GIANTS FILMS LIMITED 2017

About Author

柳 亨英

1973年東京生。国内へのアメコミの紹介や、国外へのマンガや作家の紹介など、アメコミを中心にマンガに関する仕事に、原稿執筆、インタビュー、イベント開催、司会、翻訳、通訳などとして携わる。「I KILL GIANTS」翻訳(小学館)、PEN+ダークヒーローの時代、PEN+DC最強読本、PEN+マーベル最新案内、MCUパンフレット全て、『バーバラと心の巨人(原作I KILL GIANTS)』パンフレットへの寄稿、トロント・コミック・アーツ・フェスティバル(TCAF)お手伝い、グリヒル先生海外仕事のお手伝い、等。

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