「PLAY!香港コミックス巡回展」レポート(3)

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また11月11日にはトークショーも2本行われました。

まずゲスト3大漫画家に、日本から「ガロ」伝説の編集者・浅川満寬氏を加えたディスカッション。「WEB漫画と紙の漫画」について、熱い意見が交わされました。

コニー・ラム氏の右隣が浅川氏、その隣にGordon氏

香港は日本以上に漫画のWEBメディア化が進んでいます。「読者のダイレクトな意見を反映させなければならない」「作家が描きたいものを自由に発表できる」。WEBがもつ、相反する2つの特性と付き合っていかなければなりません。漫画家各氏はその楽しみと苦労を三者三様に語り、それでも全員が旧来の紙の本へのこだわりと愛着を口にしていました。そこへ、「漫画家が描きたいものを描く」発行方針が貫かれた「ガロ」の浅川氏の意見が加わることで、ディスカッションに深みが増し、たいへん有意義なものとなっていました。また経済的なお話も、みなさん赤裸々に披露されていました(……)。

第2部は「動漫基地」館長コニー・ラム氏による香港漫画の60年史レクチャー。ライアン・ホームバーグ氏による日本語通訳つきです。

プレゼン・モニターを操作しつつレクチャー。
ヨコでライアン・ホームバーグ氏が和訳

古代連環画、清末の西洋式カリカチュア流入から、1960年代の「小規模工業の隆盛」「中華と西洋の文化衝突」、70年代の「武侠出版・カンフー映画の勃興」「汚職横行と正義の希求」など、香港独特の事情が漫画に与えた影響を、貴重な画像をまじえて詳細に説明して下さいました。

19世紀の風刺画、連環画

漫画貸本屋に集う子供たちを撮った、貴重な風景!

元祖少女漫画「13点」。タイトルを英訳すると「Miss 13 dot」

終盤はややインディーズ系・アート寄りコミックに偏重するきらいがありましたが、それでも歴史を横断的に見せ、総合的に魅力を伝える手腕はさすがでした。

客席には説明不要の御大・小野耕世氏、漫画ライターのおしぐちたかし氏、フランス翻訳の鵜野孝紀氏、アスキー総研首席研究員の遠藤諭氏や香港ガイドブックでおなじみイラストレーター小野寺光子氏まで、まぶしすぎて後光でヤケドしそうな面々が顔を揃えていました。最後には小野耕世さんがなぜか壇上に呼ばれ、「いや、私は香港は30年前のことしかわからないからねえ…」とおっしゃっていましたが、いえいえ…1983年にお書きになられたコミックカルチャー紹介書「いまアジアが面白い」は唯一無二の名著でございます。

黎達達榮=ライ・タッタッウィン氏、小野耕世氏、
コニー・ラム氏。このあと熱く抱擁していました

筆者も会場で、「香港漫画店」古くからのお得意様や趣味を同じくする皆様、昔から尊敬していた方々に多数お会いすることが出来、たいへん濃密で楽しい会期を過ごすことが出来ました。

前述のとおり展示・解説対象がインディーズ&アート方向の作家にかなり傾き、いっぽう薄装本劇画で長く業界を担った大漫画家でも極端に展示資料の少ない人物がいたり、多面性・総合性という意味合いにおいては課題も感じました。しかしこういった展覧を何度も重ねていくうちに、日本の皆さんにも香港漫画の魅力がどんどん伝わってゆくものと思います。素晴らしい企画を東京に持ってきてくださった香港藝術中心の皆さんに感謝するとともに、次の機会も心待ちにする次第です。

ちなみに「PLAY!香港コミックス巡回展」最終巡回地・香港での開催は2018年1月予定とのことです。この時期に香港に行かれる方はぜひ足をお運びいただきたいと思います。ちなみに司徒劍僑氏は「香港展も出る」とおっしゃっていましたが、出演漫画家には若干の入れ替えが見込まれるとのことです。詳しい情報はこちらをどうぞ。


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About Author

てんしゅ松田

インターネット通販ショップ「香港漫画店」店主。東京外国語大学中国語学科卒業後、レコードメーカー等勤務を経て2003年にショップ開店、香港現地産コミックを輸入販売。近年は香港コミック・おたく事情の紹介活動にも力を入れており、ミニコミ誌「マンガ論争」寄稿、トークライブハウス「ネイキッドロフト」等出演も。共著「深く美しき香港漫画の世界」は、自費出版ながら中華書籍専門店「東方書店」(東京・神保町)月間ベストセラー第3位ランクイン。

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