「PLAY!香港コミックス巡回展」レポート(2)

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週末の11月11日・12日には各種イベントも行われました。

ゲスト漫画家のライブペインティング。トップバッターは11月11日の黎達達榮=ライ・タッタッウィン氏です。

現地インディーズ不条理漫画の旗手として20年以上活躍してきた黎氏。一定の太さの描線で描き込みまくる白と黒の世界、あるいは極彩色オールカラー漫画世界は精緻そのもので、読む人を不思議な境地へと誘います。

黎達達榮氏、90年代~2000年代作品群

原画パネル

「画材箱にカラーペンが入っていたから」と、はじめてカラーペンでのペインティングに挑戦。1時間の規定時間で、あれよあれよという間に画用紙は独特の描線で埋め尽くされていきます。テーマは「日本で体験した、暑い夏」。

黎達達榮氏のライブペインティング1

黎達達榮氏のライブペインティング2

やはり神の手業だ…と思いながら、そろそろフィニッシュかな?と絵を見つめていたところ、ほぼ出来上がった画面の上に、鮮やかな青ペンで波と風、惑星が描き加えられました。これによって、かなりアバンギャルドな完成画になったような……。黎氏曰く「ちょっと緊張した」とのこと。

完成!

11月12日にはまず司徒劍僑=アンディ・シト氏が登場。

司徒劍僑氏

90年代の代表作「超神Z」は日本版・フランス版まで発行され、2000年代初頭には日本製格闘ゲーム「KING OF FIGHTERS」のコミカライズでゲームファンの心を熱く燃やし、近年はスタイリッシュな黒社会コミック「九龍城寨」で国際漫画賞(日本外務省主催)銅賞受賞など、長い活躍で日本でもファンを獲得している劍僑氏。

「九龍城寨2」第3巻(2012年)

「超神Z」第1巻(1992年)

描くのは「超神Z」の女戦闘員・銀鈴です。女性キャラ! 筆者の胸は熱くなりました。司徒劍僑氏といえば、独特のアーモンド形の瞳で魅惑する美少女キャラクター群がつとに有名。汗臭い劇画の席巻する香港薄装本界に「萌え」を伝道した聖者です。ただ近作では女性キャラの存在感が薄れていて、少し残念に感じていました。こんな素晴らしい形で再会できるとは! 感激です。

司徒劍僑氏のライブペインティング1

司徒劍僑氏のライブペインティング2

ライブペインティングでは、やはり目の描画にとても力を入れておられました。青鉛筆のアタリのあと、まず描き出すのは目。全体像をつくりながら、何度も何度も目の描画に戻ってきます。こうして読者を魅惑する瞳が生み出されるんですね。仕上げに使うPOSCAのインクが出なくて手間取りながらも、規定時間を10分残して見事完成。さすがベテランの技です。

完成!

使用画材。POSCAで何度も試し描きした跡が……

次に登場したのは、いちばんの若手・阿塗=アトウ氏です。

阿塗氏

現地Yahoo!など、WEB媒体でおもに作品を発表している阿塗氏。独特の動物キャラクターで、社会批判と香港文化復権をテーマに描き続けています。紙の本も売れており、昨年のコミック本「鵰娜猩!頂硬上!」につづき、広東語の慣用句をそのまんま絵にしてみたという新刊「圖解廣東話」が大手書店「誠品」売上ベストテン入り。発売1ヶ月で重版というモテモテぶりです。

新刊「圖解廣東話」。
表紙のひよこキャラの名は「小學雞」。
広東語では文字どおり、生半可な知識しかない「ひよっこ」という意味

もっぱらCGで漫画制作をしているという阿塗氏。紙に描くライブペインティングの話がきて、日本で画材を買い込んだとのことです。

阿塗氏の過去作品を紹介するパネルコーナー

2H鉛筆で下描きしたあと、いざ本線!と握りしめたのが「くれ竹筆ぺん」。実はこれ、香港漫画界でもポピュラーな画材なんですよ。現地では「科学毛筆」とよばれ、最大手版元「玉皇朝公司」も会社で一括購入して作画員に支給しています。

阿塗氏のライブペインティング1

阿塗氏のライブペインティング2

若手でアナログ描画の機会も少ないということでちょっぴり心配でしたが、出来上がった作品はとっても素晴らしいものでした! 日本語の「猫をかぶる」と、ほぼ同義の英語・広東語・潮州語慣用句を一枚の絵に詰め込んだ愉快な作品。なるほど…広東語だと「ブタをかぶってトラを食う」なんですね。

完成!

「ブタをかぶってトラを食う」

お三方ともライブペインティング終了後にサイン会を実施。わざわざ遠方から来られたお客さんもおられました。漫画家さん、みなさんとても気さくでフレンドリー。会場即売本のみならず、お客さんがおうちから持ってきた自著にも気軽にサインをします(香港では実はこれが普通。山のように本を持ってくるファンもいるため、漫画家のサイン会はたいてい時間内には終わらない)。

筆者も司徒劍僑氏以外ははじめてお目にかかりましたが、おふたりともたいへんチャーミングなお人柄で、ますますファンになってしまいました。

次回に続きます。


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About Author

てんしゅ松田

インターネット通販ショップ「香港漫画店」店主。東京外国語大学中国語学科卒業後、レコードメーカー等勤務を経て2003年にショップ開店、香港現地産コミックを輸入販売。近年は香港コミック・おたく事情の紹介活動にも力を入れており、ミニコミ誌「マンガ論争」寄稿、トークライブハウス「ネイキッドロフト」等出演も。共著「深く美しき香港漫画の世界」は、自費出版ながら中華書籍専門店「東方書店」(東京・神保町)月間ベストセラー第3位ランクイン。

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