「海外マンガフェスタ2018」レポート(4)

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茨城大学人文社会科学部「視覚表現論(H30)」(担当教員:猪俣紀子)を受講する大学生チームがお送りする「海外マンガフェスタ 2018」レポート。第4弾となる今回は、アーティストアレイと、メインステージで行われたトニー・ヴァレントさんと大久保篤さんによるトークライブについて紹介します。

アーティストアレイは、世界中から集まったアーティストが作品を出展・販売するエリアです。今年は21の国と地域から約60名の出展があり、とても賑やかでした。マンガの他にイラスト集やポストカード、陶芸品等を出展しているアーティストもいました。このエリアの魅力は、“世界の作家と話せる” こと。国籍も作品のジャンルも様々な出展者と交流することで、新たな発見ができるかもしれません。私たちは3人の方にお話を伺いました。

『海外マンガフェスタ2018公式カタログ』に掲載されたアーティスアレイの紹介ページ

ヌヌミ(Nunumi)さん

アーティストアレイを歩いていると、笑顔が素敵な女性に出会いました。カナダ・ケベック州出身のバンド・デシネ作家ヌヌミ(Nunumi)さんです。彼女は、アニメーション業界で15年間働いた後、バンド・デシネ作家としてデビューしました。その背景には、アニメーションよりも「自由に制作活動ができる」というマンガの魅力があったと語ります。デビュー作の『スカイ・ローバー(Sky Rover)』は元々アニメーションの脚本として考えられていたものだそうです。マンガの魅力について伺うと、「この作品をアニメーションにしようとすると2年はかかるの。けれど、それをマンガにしたら4カ月で完成したのよ。そういった制作時間の短さも魅力なの」と答えてくださいました。

ヌヌミさんの作品は、青や緑を基調としたイラストが特徴的です。なぜ青や緑を多く用いているのか理由をたずねると「カラフルに描くことが苦手だから」と答え、笑顔をのぞかせました。また、「とても好きな色なので、その色で描いてみたかった」と語ります。落ち着いた色合いで描かれたかわいらしいイラストに暖かさを感じます。こちらからヌヌミさんの作品を読むことができます。ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。

デビュー作である『スカイ・ローバー』はなんとセリフが一切ありません。ヌヌミさんにとっても新たな挑戦となった作品でした。新作『どこにも辿りつかない切符(英題:A Ticket to Nowhere/仏題:Un Billet Pour Nullepart)』では、すべての登場人物にセリフが書かれているのではなく、片方のセリフを頼りに会話を読者に想像させるという仕掛けがある本となっています。次は、どのような作品が生まれるのでしょうか。ヌヌミさんの新たな挑戦は続きます。

笑顔がとても素敵なヌヌミさん
机の上に並ぶのはヌヌミさんの好きな色合いで描かれた作品。
水筒や洋服とおそろいです

アンドレ・リヴィエール(andrè rivière)さん、マルタン・フェノ(Martin Faynot)さん

次に、日本語で声をかけてくれたベルギー出身のアンドレ・リヴィエール(andrè rivière)さんです。日本語を話せる数少ない外国人出展者ということで、ぜひお話を伺いたいと思いました。海外マンガフェスタへは今年で2度目の参加。昨年に比べて午前中が忙しかったようですが、お疲れのところ取材に快く応じてくれました。アンドレさんの作品は毛筆で書いたような、ゆるっとした線が特徴的です。コミックスとはがきを販売しており、はがきは日常の1コマからシュールなものまで9種類用意されていました。そしてお隣にはフランス出身のマルタン・フェノ(Martin Faynot)さん。マルタンさんの作品の特徴として、ブックレットは線がはっきりしていてシンプルかつコミカルな絵柄ですが、一方はがきはノスタルジックな風景、というように多様な画風の絵を描かれています。アンドレさんとマルタンさんはFacebookで知り合ったご友人同士で 、2年前にマルタンさんが海外マンガフェスタへ出展したことをきっかけにアンドレさんも出展したそうです。 今回アンドレさんはマルタンさんのブースを借りて参加しています。海外マンガフェスタの魅力を聞くと、お二人とも「様々な国の作品を読めること、シェアできること」「マンガを通して様々な国の人たちと交流できること」と答えてくれました。出身国も画風も異なるお二人が同じブースを共有して各々の作品を出していることは、お二人が話してくれたこのイベントの魅力と重なります。私たち自身もお二人と出会えたことで、そのような海外マンガフェスタの魅力を実感することができました。

アンドレ・リヴィエールさん
マルタン・フェノさん
左:アンドレさん作 右:マルタンさん作

ショウコキムラ(Shoko Kimura)さん、タニア・ビセド(Tania Vicedo)さん

最後は、楽しくお話をされていたところ取材に快く応じてくれました、スペインのバレンシア出身のタニア・ビセド(Tania Vicedo)さんと日本の神戸市出身のショウコキムラ(Shoko Kimura)さんです。

お二人は学生時代からの付き合いで、イギリスのキングストン大学院で知り合ったそうです。現在はお二人とも東京に住んでおり、タニアさんは来年スペインに戻る予定です。

左:ショウコさん  右:タニアさん

タニアさんは、ポストカードやイラスト集を販売していました。作品によってデジタルで描くか、アナログ(ポスターカラー)で描くかを決めているそうです。私たちが特に惹かれた作品は、日本の電車内の様子が描かれたイラスト集でした。電車に乗った時にスケッチをして、後日ポスターカラーを使って仕上げたそうです。電車内を描いた理由を伺うと、「来日して電車に乗った時に海外とは違う雰囲気を感じ、面白いと思ったから」と答えてくれました。車内を柔らかいタッチや温かな色使いで描いており、とても印象的でした。

タニアさんの作品
折りたためる形になっていました

ショウコさんは、ポストカードやイラスト集に加えて陶芸品の猫の形をした箸置きなどを販売していました。陶芸に関しては、大学院時代に自由に使うことができた工房で、YouTubeを見ながら独学で制作を始めたそうです。

ポストカードは3枚組で、サンタの物語が描かれたものでした。1枚目(写真右上)は、サンタがトナカイの喜ぶ姿を想像している様子です。続く2枚目(写真右下)で、おそろいの靴をプレゼントされたトナカイはそれをとても気に入ります。最後の3枚目(写真左)で、おそろいの靴を履いて子どもたちへプレゼントを届けに行くも、家の煙突が細すぎて入ることができなかった、というストーリーになっています。

ショウコさんの作品。順番に見るとストーリーを楽しめます

制作についてお二人に伺うと、「自分の作品を通して自分のストーリーを知ってもらえるのが楽しいしうれしい。人生みたいなものです」と答えてくれました。彼女たちの作品は以下のリンク先のウェブサイトから見ることができます。

タニアさんのHP
ショウコさんのHP

みなさんもお二人の人生をのぞいてみてはいかがでしょうか。

アーティストアレイは世界中から集まったアーティストと交流ができる熱気あふれる空間でした。来場者は新たなお気に入りの作品を探したり、出展者との会話を楽しんだりとそれぞれの楽しみ方で充実した時間を過ごしていました。アーティストアレイを後にした私たちは、トークライブを見るためにメインステージへと足を運びました。メインステージで行われた4つ目のイベントは、日仏少年マンガ家による少年マンガの魅力についてのトークライブです。

トニー・ヴァレントさんと大久保篤さんによるトークライブ

『ラディアン』を手掛けるフランス出身のトニー・ヴァレントさんと『炎炎ノ消防隊』を手掛ける大久保篤さん。少年マンガを描いているお二人が、フランスと日本の違いに触れながら、普段どのようにマンガを描いているのかを聞くことができました。その中で特に印象に残った二つの話題について紹介します。

イベント会場に設置されたモニター

一つ目は、作品の生まれ方についてです。『ラディアン』の主人公であるセトについて、トニーさんは『ラディアン』を描き始めるずっと前から角の生えた少年というビジュアルを考えていたそうです。同じく大久保さんも『炎炎ノ消防隊』はストーリーではなく、ビジュアルからの思いつきであると答えていました。消防士の衣装、特に昔のヘルメットやエンブレムに惹かれたことから、消防士という日常の中のヒーローをファンタジーで描くことにしたと話していました。

二つ目は、執筆するペースについてです。トニーさんは描き下しということもあって、『ラディアン』の1巻を完成させるのに 10か月かかったそうです。今は慣れて年に3巻のペースで描けていると言います。一方で大久保さんは連載をもっていることもあり、年に5巻ほど刊行しています。いくら連載をしているとはいえ、そのペースを聞いてトニーさんはとても驚いていました。大久保さんは「一冊まるまる描くとなると途方もない感じがする。でも毎週20ページと決まっていて締め切りがある。僕は飽きっぽいので、20ページを超えると嫌になって、30ページを超えるとどうでもよくなってしまう」と笑いを交えながら話していました。

トークの中で、トニーさんは『ラディアン』の主人公セトを、大久保さんは『炎炎ノ消防隊』の主人公であるシンラのイラストを描き、交換しました。

このようにトークライブは終始和やかな雰囲気で進み、マンガには遠く離れた国でもお互いを結ぶ力があると感じました。

今回、私たちはアーティストアレイにて出展者の方々にお話を伺いました。作品に込めた思いや制作動機を知ることができ、理解を深められたように感じています。また、トークライブでは、プロのマンガ家がイラストを描いていく様子を見たり、制作秘話を聞いたりと、めったに体験できない素敵な時間を過ごすことができました。

(執筆:YM、MO、MK、TH、RK)


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茨城大学「視覚表現論(H30)」

茨城大学人文社会科学部の開講する平成30年度「視覚表現論」(担当教員:猪俣紀子)の受講生。3、4年生29名。バンド・デシネ作品の邦訳作品を読んで発表するなど、授業の中で海外マンガを取り扱っている。

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