「海外マンガフェスタ2018」レポート(1)

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2018年11月25日(日)に東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で行われたコミティア126内で「海外マンガフェスタ 2018」が開催されました。

東京ビッグサイト

海外マンガフェスタとは、世界のマンガを紹介する日本発のイベントであり、2012年11月18日に初開催され、今年で7度目となっています。このイベントは、日本の“マンガ”、フランスの“バンド・デシネ”、アメリカの“アメリカン・コミックス”(以下アメコミ)など世界各国の文化に根づくマンガを通じて、作家やファンそして出版社などマンガを愛する世界の人々が交流できる場となることを目的としているそうです。

海外マンガフェスタ2018の案内パネル

海外マンガフェスタ公式サイト

海外マンガフェスタの様子

今年のメインステージ企画は以下のようなラインナップでした。

①ポーランドマンガの世界についてのトークイベント
②韓国のマンガ家キム・ジョンギ氏によるライブドローイング
③3人のイギリス出身アメコミアーティストのトークライブ
④日本とフランスの2人の少年マンガ家による「少年マンガ」の魅力についてのトークイベント

「海外マンガフェスタ2018公式カタログ」に掲載された当日のメインステージプログラム

アーティストアレイには、21の国と地域からマンガ家が大集合し、マンガだけでなくポスターカードやTシャツなども販売されていました。また、日本の大学、専門学校等が参加するマンガスクールのブースや、フランスの出版社3社へマンガを持ち込めるブースもあり、様々な楽しみ方のできるイベントでした。

世界各国のマンガ文化を色々な角度から体験できる海外マンガフェスタについて、昨年に引き続き、茨城大学人文社会科学部で「視覚表現論」(担当教員:猪俣紀子)を受講する大学生チームが各ブースやトークイベントで体験してきた魅力をあますところなく、5回に分けてお伝えしていきます。

KOMIKS!  ポーランドマンガの世界

第1回目は、メインステージで行われたトークイベント「KOMIKS!  ポーランドマンガの世界」についてご紹介します。11:10~11:40の30分間、シモン・ホルツマン(Szymon Holcman)さんが、ポーランドマンガの黎明期から現在に至るまでの歴史を様々な作品を挙げつつ説明してくれました。

ポーランドマンガの歴史を説明するホルツマンさん(左)

ホルツマンさんによれば、ポーランドのマンガ市場には100年以上の歴史があるそうです。彼によると、ポーランドマンガは1918年の新聞に掲載された『Ogniem i mieczem(火と剣と)』という新聞マンガから始まります。様々な新聞にマンガが掲載されましたが、当時メインだった読者層は新聞購読者である大人でした。その後はアメコミを始めとする海外マンガも国内に入りはじめ、若い読者を獲得したことでポーランドマンガの雑誌や単行本も刊行されました。しかし、第二次世界大戦や終戦後の共産主義体制によって、マンガブームが下火となり、一時的に途絶えてしまいますが、スターリンの死後は国内のマンガが再発展し、新聞にも連載されるようにもなりました。

1957年には週刊誌『Przygoda(冒険)』が発行され、『Tytus, Romek i A’ Tomek(ティトゥスとロメクとアトメク)』が連載されました。この作品はポーランドマンガとして定期的に単行本が発行された最初の作品であり、アニメ化もしていて、ポーランドにおいて非常に重要なマンガです。2人の男の子とチンパンジーが宇宙へ行く話で、当時ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」を宇宙へ送っていた背景から、これをアピールするための内容になったそうです。

ポーランド人民共和国時代(1952~1989)、マンガの人気に目を付けたソ連がプロパガンダとしてマンガを利用したこともありました。1967年に生まれた『Kapitan Zbik(ズビック隊長)』という作品は子ども向けに描かれていますが、格好良くて強い軍人を主人公のストーリーにすることで、軍人に対してより良いイメージを抱かせる構成でした。美麗なイラストが注目を集め、累計発行部数は1150万部にものぼり、今もなお人気を博しています。

1976年から81年にかけて刊行されていたマンガ雑誌『RELAX』ではポーランドのマンガファンを育てることになる作品がいくつも連載され、80年代にはファンタジーやSF作品を掲載していた雑誌『Fantastyka(ファンタスティカ)』に多くのマンガが掲載されるようになりました。

90年代以降の歴史については残念ながら時間が足りず、詳しい説明を聞くことはできませんでした。しかし、ホルツマンさんはトークショーの最後に、ポーランドマンガの豊かな世界を今後さらに紹介していきたいと話していました。

ホルツマンさんに直撃インタビュー

ポーランドのマンガについてもっと理解を深めるべく、私たちはポーランド広報文化センターのブースへ赴き、ホルツマンさんにポーランドのマンガと日本のマンガの違いについてのインタビューを行いました。

ポーランド広報文化センターのブースの様子

ホルツマンさんはポーランドと日本のマンガには基本的な雰囲気や描き方に大きな違いがあると言い、主に2つの観点からその違いを説明してくださいました。

1つ目はどこから影響を受けたのかについてです。ホルツマンさんは、日本のマンガには戦前の日本独特の雰囲気と、第二次世界大戦後に影響を受けたアメリカの雰囲気、この2つが混ざっていると言います。それに対しポーランドのマンガは、アメリカの影響は受けずにフランスの影響を大きく受けているとのことです。影響の受け方によってそれぞれのマンガのイメージや雰囲気のベースが出来上がっているということが分かりました。

2つ目は普及率についてです。日本では戦後からマンガの人気度が上がり続け、普及率も高くなっていったのですが、その頃のポーランドではあまり人気のあるものではなかったそうです。マンガを読むことが禁止されていたというわけではないですが、手に入れることが非常に困難でした。また、戦後のポーランドでは子ども向けマンガが数多く出版されていたことから、当時の人々にとってマンガは子ども向けというイメージが強く、大人が手に取るには恥ずかしい印象だったようです。しかしそんなポーランドでも、最近では大人でも楽しめるような様々なテーマのマンガが次々と出版され、マンガの多様化が進んできています。世界のマンガに興味がある一マンガファンとして、マンガがもっとポーランド中で広く読まれるようになるといいなと思います。

ポーランド広報文化センターブースの展示

ポーランド広報文化センターのブース内には、マンガ作品のストーリーや背景が説明されたパネルが展示されていました。いくつかご紹介したいと思います。

ブース内に置かれていたポーランドマンガ

『KAJKO I KOKOSZ(カイコとココシュ)』
著者:JANUSZ CHRISTA(ヤヌシュ・フリスタ)
賢くて勇ましいカイコとちょっとマヌケなココシュという2人の騎士が、悪い黒騎士たちと戦いながらおかしな冒険をしていくという物語です。ホルツマンさんのトークショーの中でも、このマンガはポーランドの重要な作品として紹介されていました。マンガ雑誌『Swait Mlodych(若者世界)』で人気を博していたもののひとつであり、現在では小学生の必読書として指定されている有名な作品とのことです。

『JEZ JERZY(針鼠イェジ)』
原作:RAFAL SKARZYCKI(ラファウ・スカルジツキ)
作画:TOMASZ LEW LESNIAK(トマシュ・レフ・レシニャク)
この物語は、ポーランドの政治に対する風刺が面白おかしく描かれた成人向けの内容となっています。主人公である針鼠イェジは、現代のポーランド・コミックでは最もポピュラーなキャラクターだそうです。

『BEDZIESZ SMAZYC SIE W PIEKLE(お前は地獄の火に焼かれるだろう)』
著者:PROSIAK(プロシャク)
このマンガは実際の出来事を元にした作品だそうです。メタル音楽の世界的スターたちの日常生活が描かれた物語となっています。バンド内の人間関係はなかなかうまくいかず、だんだん面倒なことになってしまいます……。

他にも様々な作品が紹介されていました。また、実際のマンガもたくさん並べられており、日本のものとは全く違う影響を受けてきたというポーランドのマンガ作品を自由に読むことができました。

普段なかなか触れられないポーランドのマンガについて多くのことを学び、ポーランドの方から直接お話を伺うという貴重な体験もできました。今回のトークイベントやインタビューは、個人的にもポーランドマンガに興味を持ついいきっかけになったと思います。

(CT、ST、MN、MO、SS、IT)


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About Author

茨城大学「視覚表現論(H30)」

茨城大学人文社会科学部の開講する平成30年度「視覚表現論」(担当教員:猪俣紀子)の受講生。3、4年生29名。バンド・デシネ作品の邦訳作品を読んで発表するなど、授業の中で海外マンガを取り扱っている。

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