「海外マンガフェスタ2017」レポート(4)

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茨城大学人文社会科学部「視覚表現論(H29)」(担当教員:猪俣紀子)を受講する大学生チームがお送りする「海外マンガフェスタ2017」レポート。第4弾となる今回は、Artist Alley(アーティストアレイ)とメインステージで行われたフィリップ・タンさんによるライブドローイングについて紹介します。

「世界各国のマンガやアニメ・ゲームが集まる海外マンガフェスタは、世界のアーティストと交流できることも魅力のひとつ」(出展について)とあるように、海外マンガフェスタには世界中からさまざまなアーティストが参加しています。その理念を最もよく体現しているのがアーティストアレイ。これはプロ・アマ問わず世界中から集まったアーティストが作品を展示販売するコーナーとなっており、参加者の国籍も作品のジャンルもさまざま。マンガだけでなく、イラスト集やシール、ポストカードなど、商品は多岐にわたります。

アーティストアレイの様子。来場者がたくさん!

多くのアーティストアレイ参加者の中から3組のアーティストにお話をうかがえました。

Natalie Andrewson(ナタリー・アンドリューソン)さん

まずはニューヨークのブルックリン在住アーティストであるナタリー・アンドリューソンさん。グラデーションを用いたカラフルな色使いとかわいらしい女の子をモチーフにした作品が特徴的です。「コミックスって男の子が主役であることが多いでしょ? だから、女の子をメインにしたものを増やしたかったの。例えば、魔法使いのキャラクターだって、女の子のイメージを前面に出したっていいじゃない。そう思って、絵を描き始めたの」と彼女は語ります。また、カラフルなピンクが好きだというナタリーさん。作品の多くに鮮やかなピンクが使われています。リソグラフというプリントの仕方で作品を作っているため、独特のカラフルさを表現できるのだそうです。色をどう組み合わせるか、メインの色をどこに置くか、ということもすべて自分の経験で培われたものなのだそう。だからといって、経験によってすべてが思い通りになるわけではなく、毎回新たな発見があるのだとか。その発見を通じて、自分の絵が変化していくのを見るのも楽しみなのだそうです。

ナタリーさん。笑顔が素敵でした

ナタリーさんの作品。
素敵な色使いでとてもかわいい!

ナタリーさんのお仕事の一端はこちらでご覧いただけます。

いちごとまるがおさん

次に、栃木県佐野市を中心に姉妹2人組で活動するいちごとまるがおさん。彼女たちは栃木県だけでなく、都内の出版社や広告代理店、さらにはゲーム会社や映像制作会社とも仕事を行っています。特徴的なこの名前の由来は、姉のけいこさんが丸顔であること、そして対照的に妹のあやこさんが、栃木県の名産品である苺のようにシャープな顔の形をしているからだそうです。今回は妹のあやこさんが別の仕事で参加できなかったため、姉のけいこさんがお母様と一緒に出展されていました。

いちごとまるがおさんが活動を開始したのは3年前。とはいえ、2人とも幼少の頃から日常的に絵に親しんでいたそうです。普段の仕事は依頼内容によって役割分担があり、デザイン系はけいこさん、イラストの場合はあやこさんが担当します。また、場合によって2人で作業することもあるそうです。そんな彼女たちが今回出品していたのは、4コマ漫画集『いちまるくんのイチゴ的日常』。いちまるくんというイチゴに扮したキャラクターの日常生活が描かれていて、ほのぼのとした雰囲気のいちまるくんのかわいらしさにほっこりしました。けいこさんはこの4コマを通して“自然の良さ”を伝えられたら、と語りました。

現在、いちごとまるがおさんの活動は台湾や中国にも進出していますが、「伝手があるなら欧米にも進出したい、今回はいい機会です」と話していました。

姉けいこさん(左)とお母さま(右)

Victor Edison(ビクター・エジソン)さん

最後に、普段英会話教室の講師として働き、その一方でマンガを描いているアメリカ人のビクター・エジソンさん。「マンガ家になるのが子供の頃の夢だったんだけど、いつの間にかオジサンになってたよ」と気さくに話してくれたビクターさんの作品は『LIFE IN JAPAN/日本生活』です。この作品には、彼の日常生活1日分が、一辺13センチメートルの正方形内に自由なコマ割りで描かれています。仕事の同僚との話や子供とのふれあい、自分が体験した話など、描かれる日常はさまざまです。さらに、セリフは英語と日本語の2か国語で書かれており、英語が苦手でも、日本語が読めなくても楽しめるようになっている点が特徴的です。365日、忙しくても何もない日でも必ず描くことを唯一のルールとしているそうです。連続したストーリー展開は存在しませんが、たまに1週間前の話を前提に作られているものもありました。マーベルコミックスの『パニッシャー』を子供の頃に読み、コミックス作家の夢を持ったビクターさんは「方向性は違えど夢をかなえたと言っていいかな」と語りました。単にマンガとして楽しめるだけでなく、英語学習のテキストになったり、日本人が気づかない日本を発見できたりする作品『LIFE IN JAPAN/日本生活』。最近ではKindle版も出版しており、作品情報はビクターさんのホームページで確認できます。

優しさ溢れるビクター・エジソンさん

アーティストアレイではブースの隣同士でおしゃべりしていたり、来場者と積極的に会話していたり、和気あいあいとした雰囲気を感じました。他にもアーティスト本人が来場者に向けてイラストを描いているブースや、人だかりの絶えない所などもあり、大盛況でした。

アーティストアレイの次に筆者は、メインステージへと向かいました。そこでは14時から、フィリップ・タンさんのライブドローイングイベントが行われていました。

司会者の質問に答えるフィリップさん(左)

『BATMAN & ROBIN』や『SPAWN』などを手がけ、現在も活躍中のアメリカン・コミックアーティストのフィリップさん。ライブドローイングが始まると、昨年映画公開された『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クインを描き始めました。その間、イベントの司会者が、フィリップさんの絵の技巧について説明していきます。書画カメラによって大画面に映し出されたフィリップさんの手元はとても素早く動き、司会者が話しているうちにどんどん仕上がります。その速さもさることながら、何より驚きなのが下書きをせずにはじめからペンで描き出したことでした。途中、会場からの質問時間があり、「今後、やってみたいタイトルやシリーズはあるか」という質問が上がりました。これに対して、「マーベルに関しては近いうちスパイダーマンをやりたい」とフィリップさんはワクワクした様子で答えました。時間に余裕ができたため、司会者のリクエストでなんと、もう1枚描いてくださることになりました。テーマはデッドプールの銃撃シーン。あっという間にかっこいい絵が完成しました。ライブドローイングで描かれた作品はフィリップさんのブースで販売されたそうです。

完成した絵とともに。フィリップさんは一番左

今回、海外マンガフェスタのアーティストアレイを取材して、筆者が考えていた“マンガ”は、世界のさまざまなマンガの一部でしかないことを改めて知りました。フィリップ・タンさんのライブドローイングでは、プロのアーティストの技量と自分の技術に対する自信を目の当たりにして、驚くばかりでした。海外マンガフェスタは、マンガを通じてさまざまな種類のコミュニケーションが成立するとても興味深い場所だと思いました。

(執筆:MY、MK)


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About Author

茨城大学「視覚表現論(H29)」

茨城大学人文社会科学部の開講する平成29年度「視覚表現論」(担当教員:猪俣紀子)の受講生。3、4年生23名。バンド・デシネ作品の邦訳作品を読んで発表するなど、授業の中で海外マンガを取り扱っている。

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