「コミックアート東京2017」レポート

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ここ数年、秋から冬にかけての時期は、海外マンガフェスタを中心に、海外マンガ関連のイベントがさかんに行われてきました。昨年からは、BRAVE & BOLD東京コミコンも開催されるようになり、まさに目白押し状態。今年はさらに、昨年夏に第1回が行われたコミックアート東京も加わりました。これ以外にも大小のイベントがいろいろ行なわれていて、全部のイベントを回ることは、はっきり言って無理です。今後の参考のためにも、どんなイベントなのか、その概要が知りたい。ということで、今回は、「コミックアート東京2017」に行ってきました。

コミックアート東京、通称CATは、2016年に始まったばかりの新しいイベント。第1回は2016年7月31日(日)に3331 Arts Chiyodaで行われました。第2回目に当たる今回は、場所をテンプル大学ジャパンキャンパス麻布校舎に移して開催されました。イベントの入場は無料で、Peatixのページから事前に予約をした人には、当日、カタログをプレゼントという形を取っていました。

会場入り口

受付に並べられたカタログ

会場として用いられたのは、テンプル大学ジャパンキャンパス麻布校舎の1階ホールと2階の複数の教室。イベントの開幕は11時、閉幕は18時45分で、その間、トークやワークショップなど、さまざまな催しが行われました。

カタログに掲載された当日のスケジュール

1階ホールにはトークステージが設けられ、さらに、レトロ印刷JAMガイマン賞が出展していました。アーティストアレイ出展者の見本誌コーナーには、多種多様な本が置かれています。

レトロ印刷JAMのスタンド。かわいい印刷物がたくさん

ガイマン賞スタンド。ガイマン賞2017の作品紹介と投票受付が行われていました

アーティストアレイ出展者見本誌コーナー

トークステージでは、1時間程度のパネルディスカッションやトークが次々に行なわれました。最初のパネルディスカッションでは、マンガ研究者の大城房美さんが司会を務め、ショーン・マイケル・ウィルソンさん、シモジマアキコさん、森川みちるさん、アビー・デンソンさん、小山夕子さんが、それぞれ、国境を越えたコラボ体験を語ってくれました。皆さんのお話をうかがっていると、さまざまな場所で、大小さまざまな国際コラボが行われているのだと、知ることができます。「世界各地のコミックアート文化を東京から発信する」コミックアート東京の開幕にふさわしいパネルディスカッションだったと言えるでしょう。こうしたイベントの醍醐味は今まで知らなかったことを知ることにありますが、そういう意味で、The ParisianerThe New Yorkerのオマージュだという『The Tokyoiter』の活動をめぐるトークもたいへん興味深いものでした。

国際コラボのパネルディスカッション

『The Tokyoiter』をめぐるトーク

個別の作家さんでは、マンガ家の駕籠真太郎さんとつげ忠男さんのトークも行われました。駕籠真太郎さんのトークのお相手は、「海外マンガの人々」で紹介したクリストファー・ブッチャーさん。海外での展開など、興味深いお話をうかがうことができました。つげ忠男さんのトークのお相手は、『ガロ』、『アックス』で編集者・編集長を歴任した浅川満寛さん。未刊の作品や今取り組んでいるテーマなど、こちらも貴重なお話をうかがうことができました。

駕籠真太郎さんのトーク

つげ忠男さんのトーク

ワークショップでは、まず、「リソグラフ体験会」が行われました。リソグラフというのは、コピー機と印刷機をまたぐ技術だそうで、印刷するたびにズレが生じるのだとか。リソグラフは、そのズレを個性として積極的に用いているそうです。

「リソグラフ体験会」ワークショップ1

「リソグラフ体験会」ワークショップ2

続いて行われたのは、「ポーズドロー」のワークショップ。毎月東京都内で行われているイベントの出張版とのこと。多くの人が参加し、二人組になって、講師の指導のもと、お互いの姿を描いていました。

「ポーズドロー」ワークショップ

その他、Pechakucha(ペチャクチャ)というコーナーでは、アーティストアレイに参加していたアーティストでしょうか、さまざまな人たちが、代わる代わる登壇し、自分のキャリアや作品を紹介していました。

Pechakucha1

Pechakucha2

注目すべきは、トークのいくつかやワークショップが、通訳なしの英語で行われていたこと。まるで海外のイベントに参加しているような気分を味わえます。英語がわからない日本人にとっては、もちろんハードルが高いと感じられるはずですが、日本語はわからないけど英語ならOKという外国人作家や参加者にはリラックスできるという利点もあるでしょう。今後回を重ねるごとにどちらにとっても楽しいイベントに発展してくれるといいなと思います。

さて、2階では、3つの教室が使用され、大教室にアーティストアレイ、もうひとつ別の大きめな教室にTCAFことトロント・コミック・アート・フェスティバルの特集が設けられ、さらに別の教室でトークやワークショップが行われました。大教室にたくさんの作家やサークルのテーブルが並ぶさまは、なかなか壮観です。

教室の入口あたりからアーティストアレイを眺めた様子

アーティストアレイの様子1

アーティストアレイの様子2

ユーロマンガブースも。小池桂一さん、カネコアツシさん、フアン・ディアス・カナレスさんのサイン会も行われていました

TCAFルームでは、教室をひとつ使って、今回来日したTCAFに関係する多くの作家さんたちが、自分たちの作品を紹介したり、販売したりしていました。TCAFについては、ぜひクリストフ・ブッチャーさんのインタビューをご覧ください。

その他、2階では、いくつかチケット制のイベントが行われ、その中のひとつ「マンガの中の女性」では、マンガ研究者の藤本由香里さんの司会のもと、マンガ家のヤマシタトモコさん、北沢バンビさん、編集者の梶川恵さんという陣容で、トークが行われていました。

トーク「マンガの中の女性」の様子

すべてを紹介できたわけではありませんが、コミックアート東京のだいたいの雰囲気は伝わったでしょうか? 今回参加してみて、インターナショナルな雰囲気を肌で感じられるという意味では、コミックアート東京は、さまざまな海外マンガ関連イベントの中でも群を抜いたイベントだと感じました。まだまだ発展の余地がある手作り感の強いイベントですが、今後の成長が楽しみです。まだ訪れたことのない方は、次回ぜひ参加してみてください。

About Author

原 正人

1974年静岡県生まれ。フランスのマンガ“バンド・デシネ”の翻訳者。訳書にバスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』(小学館集英社プロダクション)、マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット『かわいい闇』(河出書房新社)など。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』(玄光社)がある。「世界のマンガについてゆるーく考える会」主宰。もちろん日本のマンガも大好き。

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