海外マンガの人々―アンディック・プラヨゴさんインタビュー

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海外マンガの仕事に関わる人物を紹介する「海外マンガの人々」。今回ご紹介するのは、インドネシアの『re:ON Comics(リ:オン・コミックス)』の編集者でありながら、マンガの原作者としても活躍しているAndik Prayogo(アンディック・プラヨゴ)さんです。

アンディックさんの『re:ON Comics』での立場を教えてください。

クリエイティブ・ディレクターをしています。

アンディック・プラヨゴ
(Andik Prayogo)さん

そもそも『re:ON Comics』とはどのようなものなのでしょう?

インドネシア中のマンガを集めたマンガのコンピレーションです。2013年に私とクリス・リー(Chris Lie)、ユダ・ニョマン(Yudha Nyoman)の3人で立ち上げました。私たちはみな、マンガ産業に対する情熱を抱いていました。私はマンガ原作者、クリスはイラストレーター、ユダは私と同じく原作者です。そこで、私たちはその情熱をビジネスと結びつけようとしたのです。こうして『re:ON Comics』を創ることになりました。インドネシア中の作家の作品を集めました。東ジャワの作家もいれば、スラバヤ、カリマンタン、バンドン、ジョグジャカルタの作家もいます。才能を持つ作家を集め、ひとつの大きな雑誌にして出版したわけです。

『re:ON Comics』と単行本化された作品

その『re:ON Comics』で具体的にはどんなお仕事を?

クリエイティブ・ディレクターとして、『re:ON Comics』のコンテンツについて、アート・クリエイティブ部門のかじ取りをしています。例えば、どのキャラクターを雑誌の表紙に据えるのか、誰にインタビューをするのか、といったことですね。私自身、『re:ON Comics』でほとんどの記事の執筆しているのですが、一方、掲載作品のうちのいくつかの原作も担当しています。原作の仕事は他社のためにもしています。
クリエイティブ・ディレクターの仕事について、もう少し詳しくお話ししましょう。例えば、『re:ON Comics』第28号の表紙を飾ったのは『ヌサ ファイブ(Nusa V)』という作品です。『ヌサ ファイブ』の作者はスウェタ・カルティカですが、その号では彼の作品が2つ新たに始まりました。そこで、彼にインタビューしようということになったのです。ですから、雑誌の外観をどうするかということから始まって、その内容をどうするか、もしページに余裕があったらどんな記事で埋めるか、逆に載せたい内容が多すぎてページが足りない場合どの記事を減らし次号に回すのか、といったことを考えるのが私の仕事なのです。編集者にアドバイスすることもあります。今号の特集作家をどうするのか、次号はどうか、掲載順をどうするのか、少年マンガと少女マンガのバランスをどうするのか、新しい号では、コメディ、アクション、ドラマ、その他のジャンルをどう配分するか、といったことです。

『ヌサ ファイブ』が表紙を飾った『re:ON Comics』第28号

アンディックさんが原作を担当した作品について教えてください。どんな作品なのでしょう?

『re:ON Comics』で最初に原作を担当したのは『レイ・レイ・キャット(Lay Lay Cat)』という作品です。シェラ・ロースィタ(Sheila Rooswitha)というイラストレーターとの共作でした。『シヴァース(Shivers)』(re:ON発のアンソロジー)でもいくつか短編の原作を担当しています。サスペンスやホラー作品が多いですね。さまざまなアーティストと共作することで、多くの経験を積むことができました。私が伝えたいことをマンガに落とし込むやり方は、作家ごとに異なります。時にはページやコマの簡単なスケッチを私自身が描いて指示することもあります。これこれこういうアートにしてほしいということをね。たいていは簡単なスケッチです。キャラクターが私の想像と合わない場合は、やはり指示を出します。キャラクターはこうあるべきだ、もっと痩せさせてくれ、もっと太らせてくれ……。そうやってアーティストに、キャラクターはマンガの中でこうあってほしいと指示するんです。

アンディックさんと原作を担当した
『レイ・レイ・キャット』

このお仕事に就くようになったきっかけは何ですか?

マンガは常に私の情熱でした。ただ、あくまで趣味で、それが仕事になるとは思いもよりませんでした。元々、私はグラフィックデザイナーとして働いていました。その後、プロパティ・ビジネス業界で事業開発マネージャーも務めました。しかし、あるとき、それらの仕事は自分が本当にやりたいことではないと気づいたんです。お給料はよかったんですけどね(笑)。ですから、2013年にパートナーたちが私にマンガのビジネスを立ち上げないかと持ちかけてきたとき、仕事をやめる決断をし、『re:ON Comics』の創刊に加わることにしたんです。

お仕事のどんなところにやりがいを感じますか?

最初のマンガが出版され、書店の棚に置かれているのを見たときはうれしかったですね(2010年のことです)。その作品は、2011年のインドネシア・コミック・アワードで最優秀児童マンガ賞と最優秀脚本賞を受賞したんですが、そのときはついに夢が叶ったと感じました。ようやく本当にマンガ原作としてやっていけるんだというちょっとした自信も持てました(笑)。

受賞したのは何という作品ですか?

2010年に出版された『バラタユダ(Baratayuda)』という作品です。インドの古い民話を新しく翻案した作品なんですが、この民話はインドネシアではかなりよく知られているんです。もはやインドネシアの古い民話と言えるようなもので、それを拝借したわけです。カウラヴァという一族とパーンダヴァという一族の間の争いの話です。兄弟間の争いの物語を子供向けのマンガにするわけですから、部分ごとに子供向けにふさわしいかどうか自分で判断して、ふさわしくない部分は物語から省くということをしていきました。結果的に、2011年に最優秀脚本賞と最優秀児童マンガ賞という2つの栄えある賞をいただくことができました。

アンディックさんのデビュー作『バラタユダ』

あなたにとってマンガの魅力とは何でしょう?

大切なのは、心から好きで楽しんでいることです。この仕事を続けるのにそれ以上の理由は要らないと思います。

日本のマンガやアメリカン・コミックスと比較してみて、インドネシアのマンガには何か固有な特徴があるでしょうか?

(現代の)たいていのインドネシアのマンガは、絵柄の上で日本のマンガにとても似ています。若いインドネシア人作家は日本のマンガに非常に大きな影響を受けているからです。一方で、年配の作家たちはアメリカのスーパーヒーローコミックスやヨーロッパのマンガから大きな影響を受けています。日本のマンガや西洋のコミックスとインドネシアのマンガの間に違いがあるとすれば、まずはストーリーでしょうか。インドネシアの作家の大多数は、物語の背景に私たち自身の文化を用いることが多いです。インドネシアの伝統的な装飾をキャラクターのコスチュームなどに使う作家もいますね。

『Re:ON Comics』チーム

現在進行中のお仕事について差し支えない範囲で教えてください。

日本を舞台にした作品を執筆中です。インドネシア教育文化省のレジデンシ・ペヌリス(Residensi Penulis)という奨学金プログラムがあるのですが2016年にそれに受かりました。そのおかげで、2016年の11月6日から12月6日にかけて日本に滞在し、取材をすることができたのです。とても粗雑で横柄なインドネシア人コスプレイヤーが日本での生活に右往左往し、日本での経験を通じてさまざまな教訓を手にし、人として成長する。そんなストーリーです。

もう発表されているのですか? どんなタイトルなのでしょう?

いえ、まだ発表していません。2018年初頭に単行本として出版される予定です。タイトルは『おはよう東京!(Ohayo, Tokyo!)』です。

(翻訳:花木海斗)

About Author

花木 海斗

1996年広島県生まれ。都内の大学でフランス文学とフランス語圏のマンガ“バンド・デシネ”について学んでいます。主にバンド・デシネを読んでいますが、最近はオルタナ系のアメコミ、アジアのマンガなども読み始めました。80年代の美少女マンガ、19世紀フランスの諷刺画などにも関心があります。ライフワークはノスタルジア探求。休日はどこかの古本屋か廃墟に現れます。

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