海外マンガの人々―スウェタ・カルティカさんインタビュー

Google+ Pinterest LinkedIn Tumblr +

海外マンガの仕事に関わる人物を紹介する「海外マンガの人々」。今回ご紹介するのは、インドネシアのマンガ家で『グレイ&ジンガ(Grey & Jingga)』で知られるスウェタ・カルティカさん。北九州市漫画ミュージアムで行われる「北九州国際漫画祭2018」(2018年12月22日〜2019年1月20日)の開幕記念ギャラリートーク(2018年12月22日)に合わせて、来日参加されます。

はじめまして。スウェタさんのお仕事について教えてください。
Facebookのプロフィール欄には、たくさんの肩書が載っています。様々なご活躍をされている背景もお聞かせください。

スウェタ・カルティカです。インドネシアのマンガ家で、趣味は料理です。

スウェタ・カルティカさん(Sweta Kartika)

自分が関わっているインドネシアのマンガ産業について、全体像を徹底的に知りたいと思っています。それで、いろんな出版社からいろんな方式で作品を出版してます。コロニ・グラメディア(Koloni Gramedia)のような大手でも仕事をする一方で、リオン(re:ON)やコスミック(Kosmik)のようなニッチな出版社とも働いています。さらには、私自身が設立したパデポカン・ラガスクーマ(Padepokan Ragasukma)のように、インディペンデント出版社からも本を出していますし、『グレイ&ジンガ コーヒー42(Grey & Jingga: Coffee 42)』や『ドリームキャッチャーズ(The Dreamcatchers)』、『パンカ(Panca)』などの作品は自費出版です。ワナラ・スタジオ(Wanara Studio)というのは、友人たち3人とともに創立したグラフィック・デザイン・スタジオで、そこでは、私はイラストレーターとして働いています。

ご自宅はバンドンとお聞きしました。インドネシアの出版社はジャカルタに集中していますので、バンドン在住はお仕事の障害になりませんか?(バンドンは、インドネシアの首都ジャカルタから200㎞離れています。)

バンドンはジャカルタのような人が多いところとは違って、静かな街なんです。落ち着いた環境だと創作に専念できますからね。もしかしたら日本の京都と東京の関係に似ているかもしれません。それでも、月に2~3回は商用でジャカルタを訪れます。

都会の喧騒を離れ、静かなビーチでスケッチをするスウェタさん

マンガ家になろうと思ったきっかけは何ですか?

私はマンガに囲まれて育ちました。父もマンガを描いていて、インドネシアの伝統的な格闘技をベースにしたアクションマンガを描いていたんです。でも、父のマンガは一度も出版されることがありませんでした。子供の頃から、父母は私や兄弟姉妹たちにマンガを買い与えてくれました。そのおかげで、私も大人になってから、自然とマンガを描きたいと思うようになったんです。

スウェタさんのお父さんが描いたイラスト

現在も複数の連載をお持ちです。スケジュールはハードではないですか?

そこまで特別な感じではないです。私はごく普通の人間ですからね。家では家族のために料理をする担当なんです。だから、私の一日は朝食を作り、教師をしている妻のためにお弁当を用意するところから始まります。その後、妻を車で職場まで送ります。そのままパデポカン・ラガスクーマのスタジオに行って、マンガを描きます。時には妻の送迎をせずに、家でそのまま仕事をすることもあります。新しい映画が公開されたりすると、妻と一緒にそれを観て、私だけそのまま外でマンガを描くこともありますね。

執筆中のスウェタさん

お好きな日本のマンガ家や影響を受けた日本のマンガ作品はありますか?

井上雄彦先生の作品から、影の使い方や筆の扱い方について、影響を受けています。浦沢直樹先生からはストーリー作りに当たって、映画的なテイストを入れるという部分に関して影響を受けています。それから、日本のマンガではないですが、アクションについては、香港のトニー・ウォン(黄玉郎)先生からも影響を受けています。

グレイ&ジンガについてお話をお聞かせください。この作品はFacebookで人気に火がついた大学生の甘酸っぱいラブストーリーで、マンガとは別に「恋愛」についての格言や詩のような文章が散りばめられている点も印象的です。

当時、Facebookはできるだけ多くの人たちと交流する上で有効なSNSでした。そこで、週刊連載ができるフリーのプロモーションメディアとしてFacebookを使おうと思ったんです。読者からの反応も一目瞭然ですしね。『グレイ&ジンガ』の中にはいろんな話があって、私自身の実体験も友人たちの体験から着想を得た話もあります。ただ、大部分は私が想像したものです。子供の頃、父が文学の蔵書を見せてくれました。その頃から私は恋愛小説が好きなんです。『グレイ&ジンガ』に詩を付けたのは、私なりにマンガを通じて、近代的な大衆文学をやってみようという気持ちの表れですね。

スウェタ・カルティカ『グレイ&ジンガ』日本語版表紙

恋愛マンガを描くのはお好きですか?『グレイ&ジンガ』のキャラクターからガールフレンドを選ぶとすると誰でしょう?

詩的な恋愛を描くよりはコメディのほうが好きですね。私自身、恋愛が得意ではなく、いつもおどけているようなタイプなんです。キャラクターの中から誰かひとり選ばなければならないとしたら、ザハラかなあ。彼女は独立心が強くて、誠実でざっくばらんな性格です。恋人に対して思わせぶりないろんな意味に取れるシグナルを送ったりしませんし。

ザハラ(『グレイ&ジンガ』より)

『グレイ&ジンガ』と対極のような『スパルコ(Spalko)』というアクションマンガも描かれていてびっくりしました。どうしてまるで異なるジャンルにチャレンジしようと思われたのでしょう?

あるとき、リオン・コミックス(re:ON comics)で、誰のどんなマンガを読みたいかという読者アンケートをしました。結果として選ばれたのが私で、アクション&ラブロマンスを読みたいという声も多かったんです。リオン・コミックスの創立者のひとりにアンディック・プラヨゴがいますが、実は、もともと彼とは仲が良く、彼からリオン・コミックスで描いてくれないかと誘われました。こうしてアクション&ラブロマンス『スパルコ(Spalko)』が始まりました。

スウェタさん(右)とアンディックさん(左)
re:ON comics連載中の『スパルコ(Spalko)』

様々な作品を描かれている中で、特に思い入れのある作品はありますか?

『プサカ・デワ(Pusaka Dewa/「神の遺産」という意味)』ですね。ある強力な剣をめぐる戦士たちの戦いを描いた作品です。パデポカン・ラガスクーマという、私が友人と立ち上げたインディペンデント出版社から刊行されています。

『プサカ・デワ(Pusaka Dewa)』
Sweta Kartika, Pusaka Dewa, Padepokan Ragasukma

“ウェブトゥーン(Webtoon)”も描かれていますが、“マンガ”とは違うものでしょうか?

大きく違いますね。現在取りかかっているウェブトゥーンは、脚本から作画、彩色までフルデジタルです。一方で、紙で出版されることが前提のマンガは、基本的にすべてアナログで描いています。

スウェタさんはマンガ制作だけでなく、曲作りも積極的にされています。スウェタさんにとってマンガ制作と楽曲制作の違いとは何でしょう? どちらが難しいですか?

曲を作るほうがずっと難しいですね。私にとって楽曲作りは趣味ですが、マンガ制作のほうはまがりなりにも仕事だからです。私がこれまで作ってきた曲はどれも、『グレイ&ジンガ』のサウンドトラックのようなものです。一番気に入っている曲を以下のリンクからお聴きいただけます。英語にするとしたら、「The Sweetest Afternoon Love Story」といったところでしょうか。

インドネシアでは日本のマンガが数多く翻訳出版されています。そんな中で、現地オリジナル作品は、どのように受け入れられているのでしょうか?

私は、インドネシアのマンガにインドネシア国内のマーケットリーダーになってほしいと思っています。ちょうど今、大きな変化が起こっている最中で、インドネシアの読者が、インドネシアのマンガに今まで以上に興味を持ちつつあります。私自身のマンガについて言えば、私のマンガにはインドネシア固有の要素が散りばめられているんですが、その作品を世界のさまざまな場所で出版することで、インドネシア文化を世界に広く知ってもらいたいと思っています。世界のマーケットに受け入れられるためにも、作品のクオリティをあげていかなければなりませんね。

これから制作される作品について教えてください。

パデポカン・ラガスクーマの友人たちと、『マジャパヒトの守護者たち(Guardians of Majapahit)』といマンガ作品に取り組んでいます。かつて、インドネシアに君臨したマジャパヒトという王国を紹介する、とても良い作品になるのではと期待しています。

『マジャパヒトの守護者たち(Guardians of Majapahit)』 Sweta Kartika, Alex Irzaqi, Dedy Koerniawan and Ivan Chen, Guardians of Majapahit, Padepokan Ragasukma

スウェタ・カルティカさん(Sweta Kartika)出演イベント:

日時:12月22日(土) 11:15~12:00
会場:北九州市漫画ミュージアム 企画展示室A
インドネシア・マレーシア漫画展開幕記念ギャラリートーク
出演:スウェタ・カルティカ(Sweta Kartika)、ジョンスラヤ(Jonsuraya)

日時:12月22日(土) 14:00~17:00
会場:北九州国際会議場 国際会議室
「北九州国際漫画大賞」表彰式&記念イベント
出演:松本零士、うえやまとち、萩岩睦美氏、小松悠真、スウェタ・カルティカ(Sweta Kartika)、ジョンスラヤ(Jonsuraya)など

リンク:http://www.ktqmm.jp/kikaku_info/10096

翻訳者: 原 正人

About Author

Kazue Kida

1988年大阪府生まれ。慶応義塾大学を卒業後、英会話講師をしていたが、漫画愛が高じ2017年デジタルカタパルト株式会社に東南アジア担当として入社。東南アジア諸国のブックフェアに出張する傍ら、「仕事だから」と言い訳をつけて毎日漫画が読める生活を満喫している。最新トレンドとタイ作家をいち早く発掘するためタイ語を勉強中。ตาย แล้ว。

Leave A Reply