海外マンガの人々―AKRUさんインタビュー

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海外マンガの仕事に関わる人物を紹介する「海外マンガの人々」。今回ご紹介するのは、台湾の漫画家 AKRU(アクル)さんです。AKRUさんは台湾内に限らず日本のマンガアプリでも作品展開されています。1935年(昭和10年)頃の台北を舞台にした物語『北城百畫帖』から、現在取り組んでいる最新作にいたるまで、語っていただきました。

AKRU(アクル)さん

『北城百畫帖』について、日本の方々に向けて、どんな作品か、簡単に説明していただけますか?

北城百畫帖』は「百畫堂」という架空の喫茶店での出来事をまとめたストーリー集です。時期は1920~1930年代。当時の台湾は日本に統治されている植民地であり、新旧交代の時代でした。日本でいうと、大正時代の雰囲気に似ているかもしれません。百畫堂が建てられた場所は栄町という当時の台北で最も賑やかで、文字通り栄えたエリアです。カフェと喫茶店は新時代の象徴で、また洋食や洋楽などのモダンなもの、高等教育を受けた文化人が多く集まる場所でした。このお店の窓越しに、当時の人々の生活を覗くことができるかと思います。同時に、この頃の台湾に対して私が抱いている幻想も、この作品の中に込めたいと思っています。

『北城百畫帖』1巻と2巻の表紙

日本に統治された昭和時代の台北が舞台

どうして日本の統治時代を背景に作品を描くことになったのですか?

私は台湾の歴史にとても興味を持っています。以前、19世紀後半の西洋人の学者が台湾で冒険する話も描いたことがあります。日本統治時代に目をつけたのは、1935年に開かれた台湾博覧会の資料を読んだ時です。写真に記録された当時の風景は、私がイメージした祖父母の時代よりもはるかに繁栄していて、そのことに驚きました。これまで台湾の歴史教材には、政治的な影響から、日本統治時代についての記述は極めて少なく、祖父母もめったに口にしません。そのため、両親と私の世帯はその時代についてあまり詳しくなかったのです。この作品を作り始めて、いろいろ勉強になりました。

台湾博覧会会場配置図(出典:國史館臺灣文獻館藏)
第一会場:現在の台北市中華路台北公会堂(中山堂)
第二会場:現在の二二八和平公園
分場:現在の大稲埕(だいとうてい)付近。

作中に描かれた台湾博覧会会場

この時代のファッションが特にしっかり描かれているように感じました。
このような情報はどのように調べられたのでしょうか?

日本には江戸時代や大正昭和の生活雑学などに関する書籍や図鑑が豊富ですが、台湾ではそのような資料が非常に少ないため、創作時は参考資料を探すのにかなり苦労しました。幸いこの作品は、中央研究院の数位典蔵資料庫と協力して制作していますので、多くの資料収集は編集者に手伝ってもらいました。もちろん、自分で収集したその時代についての書籍もありますし、資料が見つからない場合は、同年代の日本や中国の資料を参考にしたりもしています。生活の細部に関する資料は、日本に旅行した時に取材もしました。

巻末には当時のファッション解説もついている

作品の中でお気に入りのシーンはどこですか?

喫茶店のシーンは全部好きで、描いていてとても楽しかったです。ほかに2巻目の第3話「島都春走」に、女の子が白虎に乗って空を飛ぶシーンがあるんですが、それもとても気に入っています。

AKRUさんお気に入りのシーン ①

AKRUさんお気に入りのシーン ②

AKRUさんは、同人誌イベントでの活動も積極的になさっていると聞いています。日本のイベントには参加されたことがありますか?

コミティアと赤ブーブー主催のオンリーイベントに一回ずつ参加したことがあります。日本のイベントの印象は、とにかく大きいことですね。場所はもちろん広いし、サークルの数もとても多く、台湾のようにひとつひとつのサークルをゆっくりと回ることができないほどです。台湾では、特に事前の準備をしなくても、一日で全部回れますし、疲れたときは休憩所でひと休みしてから、回りなおしても問題ないです。日本は規模が大きいため、まずは興味のあるターゲットを決めて、そこから順に回らないとダメですね。参加者もほとんどがグッズを買ったらすぐに次の目的地へ行ってしまう感じです(笑)。
コミティアは多元的で、とても面白いと思います。一般的なジャンルだけでなく、とてもマニアックなマイノリティ向けのジャンルもあります。台湾のオリジナルイベントでも、いずれジャンルがどんどん豊かになっていってくれたらいいのにと思います。

参加することが多い同人イベントはありますか?
同人誌イベントはどのようなポイントで選んでいますか?

毎年冬夏二回、台北で開催される総合的なイベントには常に参加しています。読者層の関係で、女性向け中心のC.W.T 台湾同人誌即売会に出展することが多いです。男性向けのFancy Frontier 開拓動漫祭への参加回数はあまり多くありません。台湾中南部のイベントへの参加はスケジュール次第です(実はサークル参加を口実に遊びに行っています)。

「夢十四列車」シリーズと「龍行旅」シリーズについて、簡単に教えてください。日本人が台湾の同人誌を買おうとしたら、どこで買うことができますか?

「夢鉄」(「夢十四列車」)は魔法で人の夢の中を走る列車のお話です。さまざまな動物や、精霊、神怪が列車で出会います。魔法世界に間違って迷い込んでしまった人間も、たまにいます。すべてのストーリーは車掌と乗客の間に起きたことを中心に展開していきます。
「龍行旅」シリーズは、二人の雲遊芸人が各地へ旅する伝記です。旅先で様々な人、神、妖怪と出会い、そして実は神魔の世界では起きているある変化に気付いていて…というお話です。
今、私個人のオリジナル同人誌は台湾だけで販売しています。イベントもしくは通販(G77BOOKY)で購入できます。

夢十四列車シリーズ

龍行旅シリーズ

AKRUさんの活動の最新情報を知るには、どこをチェックしていればいいですか?

一番よく使っているのはPlurkですね。Blogはイベント前だけ更新しています。

  • AKRUさんのPlurk
  • AKRUさんのBlog

  • 以前のインタビューで、影響を受けた作品について質問された際、ジブリ映画が大好きと答えられていましたが、最近ではどのような作品がお気に入りですか?

    最近は雲田はるこ先生の『昭和元禄落語心中』という作品がとても好きです。落語はあんまり詳しくないのですが、その作品から伝わってくるある物事に対する愛情とか大事にする気持ちがとても感動的です。ほかに、最近気になる作品はケビン・ハーン(Kevin Hearne)の『The Iron Druid Chronicles』シリーズ、非常に面白い都市SF小説です。

    雲田はるこ『昭和元禄落語心中』(講談社)
    試し読み

    ケビン・ハーン『The Iron Druid Chronicles』(台湾版・蓋亞文化)

    日本の作品をたくさんご覧になっているとのことですが、ご自身の創作活動では、逆に日本のマンガとの違いを作ることに意識はありますか?

    あんまり意識はしていませんね。やっぱり興味のあるテーマを中心にしています。台湾本土の題材やテーマもとても魅力的に感じています。

    日本にはよく来られますか?

    日本には7~8回は来ていると思います。私は人文学や歴史に興味があり、それに関連した場所が好きです。機会があれば、伝統のある町は全部見に行きたいです。
    日本で行われる漫画関連のイベントには何回も参加させていただきました。最も印象的なのは、日本の皆さんが漫画に対して真面目な姿勢で向かわれているというところです。作品のストーリーや絵作りの技術の研究についても、とても真剣だと思います。

    ちょっと変な質問ですが…、髪の毛がすごく長い時と、すごく短い時と、ヘアスタイルが大きく変化しますが、ヘアスタイルを変えるきっかけは何かありますか?

    毎日見ているものなので、飽きたら変えてしまいます(笑)。

    現在取り組んでいる作品について紹介いただけますか?

    今制作しているのは、以前「ジャンプ+」で連載していた『古本屋槐軒事件帖』シリーズの新作です。

    『古本屋槐軒事件帖』ジャンプ+
    古本屋槐軒事件帖』(2015年公開)
    古本屋槐軒事件帖〜水面の階段〜
    (2016年公開)

    台湾漫画がもっと盛り上がるためには、これからどんなことが必要だと思いますか?

    「企画」ですかね。企画を立ち上げた最初の時期に、後々プロモーションできそうな要素も含めて考慮しとかないといけないと思います。人気の要素だけではなく、ストーリーの中で、一番読者が惹かれる部分はどこかを把握しておくべきだと思います。そして、その部分をちゃんと、確実に仕上げることが大事だと思います。

    今後、どんな作品を描き、どんな活動をしたいですか?

    今はキャラクターを主体にストーリーを語るスタイルを試してみたいです。違うジャンルの作品を描くことにも興味があります。

    最後に日本の読者の方にメッセージをお願いします。

    将来私の作品が日本語版になったら、ぜひ日本の読者の皆さんに直接読んでもらいたいです。いつも私の作品を紹介の形でしかお伝えできなくてもどかしい思いをしていたのですが、そうしたら、そのもどかしさから自由になれると思います(笑)。


    AKRUさんは11月後半に複数のイベントに出演予定です。ぜひお越しください。

    AKRUさんご参加イベント:

    2017年11月23日(木・祝)11:00~16:00
    東京:東京ビッグサイト『コミティア122』内特設会場
    海外マンガフェスタ2017
    11:00~12:30 ライブドローイング @コミックカタパルトブース
    13:15~14:15 サイン会 @GAEA ブース

    販売物:蓋亜文化漫画作品集(日本語)+サインボードセット/1,500円(税込)

    2017年11月24日(金)18:30開場 19:00開始
    東京:台湾文化センター(東京都港区虎ノ門1-1-12虎ノ門ビル2階)
    講座第2回「台湾漫画で知る 台湾の伝統 昔と今」
    事前予約制

    About Author

    平柳竜樹(TK)

    1977年東京都豊島区生まれ。テレビ番組のナレーション、システム企業での新規事業立ち上げ、ベンチャー企業のスタートアップや事業再生のサポート業務を経て、2009年よりデジタルカタパルト株式会社に参加、2012年取締役就任。現在は、海外のブックフェアや出版社を巡る仕事が中心。一度、海外出張に出ると、なかなか日本に帰ってこないため、「マグロ漁船にでも乗ってるようですね。」と言われる。

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