【レポート】世界のマンガについてゆるーく考える会 #10

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日時:2018年1月29日(月) 19時から21時(18時30分開場)
場所:東京都文京区小石川4-14-12 共同印刷本社101ホール
参加者:約30名

通算10回目、2018年最初の「世界のマンガについてゆるーく考える会」です。

スタートは19時15分頃。まずは代表の原が挨拶がてら、Comic Streetの最近の記事についてお話しいたしました。つい先日、Comic Streetの「海外マンガの人々」のコーナーで、カナダはケベックのバンド・デシネ作家レアル・ゴドゥブさんのインタビューを公開したのですが、その流れで、2月6日(火)にカナダ大使館で行われる「レアル・ゴドゥブ(Réal Godbout)さんとカナダ・ケベック州発のコミックス〈ケベック・バンド・デシネ〉について語ろう」というイベントについてもご紹介しました。続いて、会の全体の構成についてご説明。前半はレポートや発表中心、中休みの閲覧タイムを挟んで、後半は持ってきていただいた本のプレゼンです。

前半のレポート・発表パートでは、フランスの出版社Ki-oon(キューン)社の東京オフィス代表キム・ブデン(Kim Bedenne)さんが、同社の活動について話してくれました。

Ki-oon東京オフィス代表キム・ブデン(Kim Bedenne)さん

Ki-oonは、2003年、アメッド・アニュさんとセシール・プルナンさんが創立したフランスの出版社。日本のマンガをフランス語に翻訳出版するフランス=ベルギーの出版社はいくつもあるんですが、Ki-oonもそういった出版社のひとつです。実際、キムさんによると、Ki-oon社のカタログの大半は日本で出版されたマンガのフランス語訳なのだとか(韓国マンガの翻訳も一部あるそうです)。ところが、Ki-oonには、日本マンガをフランス語に翻訳出版するその他の多くの出版社とは異なる特徴があります。それは、フランス語のオリジナルマンガの出版です。既に日本語訳のあるトニー・ヴァレント『ラディアン』を知っている方なら、フランスで、フランス人が描くオリジナルマンガが、ここ数年特に増えてきていることをご存じかもしれません。Ki-oonもそうしたフランス人マンガ家によるオリジナルマンガを出版しています。が、Ki-oonの特異性はそれだけにとどまりません。実は、Ki-oonは、フランス人マンガ家ならぬ日本人マンガ家によるフランス語オリジナルマンガを出版しているんです。Ki-oonの活動について、詳しくはぜひこちらの記事を読んでみてください。

後に日本に逆輸入され、日本でも人気を博した筒井哲也『予告犯』のフランス語原書版(Prophecy, T1, Ki-oon, 2012)

フランス人作家によるオリジナルマンガ。
ショウネン作『アウトロー・プレイヤーズ』(Shonen, Outlaw Players, T1, Ki-oon, 2016)

これまでに日本人マンガ家によるフランス語オリジナルマンガをいくつも出版してきたKi-oonですが、今年2018年からは、さらにその活動に力を入れるとのこと。その一環として、1月25日(木)、フランスで『キューン・マグ(Le Ki-oon Mag)』という雑誌が刊行されました。総ページ数240、5つのマンガとルポルタージュ記事などを収録したこの雑誌は、なんと、書店などで無料で配布されているそうです。キムさんによると、この雑誌は週刊誌や月刊誌のような刊行頻度の高い定期刊行物ではなく、2018年にKi-oonが刊行するシリーズもののマンガのプロモーション的意味合いで制作されたものだとか。5つの作品の第1話が収録されているのだそうです。5つのマンガはすべて、日本人マンガ家によるオリジナル作品。いやはや、すごい時代になったものです。そして、これだけのページ数の雑誌を数万部も刷り、無料で(ちなみに日本にもかつて『コミック・ガンボ』という無料の週刊マンガ誌がありました)配布してしまうんだからすごい! Ki-oonは、それ以外にも、新作マンガのプロモーションアニメを日本のアニメスタジオに依頼するなど、自社の作品を知ってもらうために、膨大なお金と努力を費やしています。Ki-oonの今後の展開に期待です。

『キューン・マグ(Le Ki-oon Mag)』

中を開くとこんな感じ。ジャンルや絵柄の異なる5つの作品が楽しめます。中には日本マンガとは逆の開きのカラー作品も

キムさんへの質問タイムの後、休憩を兼ねて、15分程度の閲覧タイム。例によって、参加者の皆さんが持ってきてくださった本が、ところ狭しと並べられています。

当日集まった世界のさまざまなマンガ1

当日集まった世界のさまざまなマンガ2

当日集まった世界のさまざまなマンガ3

当日集まった世界のさまざまなマンガ4

 

閲覧タイムの様子

後半は全部で6名の方が、自ら持ってきてくださった世界のマンガを紹介してくれました。紹介された本は以下の通りです。邦訳も原書も合わせて、さまざまな本が取り上げられました。著者名、作品名を正確に記すとなると、結構大変なので、簡単なキャプションを添える程度にとどめます。

『かわいい闇』の翻訳で知られるケラスコエットの未邦訳作品。左がカラー版で、右が白黒ならぬ白黒緑版

『青い薬』、『KOMA―魂睡』で知られるフレデリック・ペータースの未邦訳作品2点。左は英語版

『レボリュ美術館の地下』、『神様降臨』、『3秒』などで知られるマルク=アントワーヌ・マチューの未邦訳作品『オットー(Otto)』の中面

香港のある政党が出版したというマンガ誌

門小雷―Little Thunderの作品

ジャズのスタンダードナンバーを変奏するように、BDの古典数十点の1ページを変奏したブルッチの新作(左)と絵本的なバスティアン・ヴィヴェスのホラー作品(右)

ケベック・バンド・デシネを代表する作家ミシェル・ラバリアティの「ポール」シリーズ第一作(左)と邦訳が出る予定の『金正日の誕生日』(右)

Comic Streetでも小野耕世さんがレビューしてくれたビルギット・ヴァイエ『マッドジャーマンズ』

コミックカタパルトから電子書籍版の邦訳がまもなく刊行予定のマレーシアのマンガ『アタン』

見事なオールカラー作品です

香港のマンガ家利志達の作品が掲載された『ヤングマガジン』

『ヤングマガジン』に掲載された利志達のマンガ

21時10分頃にすべての発表が終了。その後、さらに20分程度閲覧タイムを設け、「世界のマンガについてゆるーく考える会」#10は終了となりました。

次回「世界のマンガについてゆるーく考える会#11」は、2018年3月23日(金)に開催予定です。改めて告知いたしますが、「世界のマンガについてゆるーく考える会」は、未参加の方や海外マンガ初心者の方大歓迎のイベントですので、ぜひ気軽にご参加ください。

About Author

原 正人

1974年静岡県生まれ。フランスのマンガ“バンド・デシネ”の翻訳者。訳書にバスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』(小学館集英社プロダクション)、マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット『かわいい闇』(河出書房新社)など。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』(玄光社)がある。「世界のマンガについてゆるーく考える会」主宰。もちろん日本のマンガも大好き。

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