【レポート】世界のマンガについてゆるーく考える会 出張版:チェコ・コミック編

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日時:2017年10月15日(日) 16時から18時
場所:米沢嘉博記念図書館 2階閲覧室
参加者:約30名

去る10月15日(日)、世界のマンガについてゆるーく考える会、初めての出張版が行われました。しかもテーマはチェコ・コミック。いくら“ゆるーく”とは言っても、参加者のほとんど誰もが知らないであろう海外マンガで、はたして会が成立するのか!?そもそも参加者はいるのか!?という一抹の不安を抱えつつの開催だったのですが、蓋を開けてみると、30名超の大入り。前日の10月14日(土)に同じ米沢嘉博記念図書館で「チェコ・コミック通史-20世紀を生き抜いたチェコ・コミック-」という講演(レポートを近日公開予定!)をなさったチェコ国立科学アカデミー・チェコ文学研究所研究員パヴェル・コジーネクさん、「チェコ・コミックの100年展」のコーディネートに携わられたジャン・ガスパール・パーレニーチェクさんも参加という、超豪華な陣容でお届けできることになりました。通訳を務めてくださったのは槇敦子さんです。

まずは全員で1階展示室に移動し、「チェコ・コミックの100年展」をじっくり堪能。

「チェコ・コミックの100年展」会場

コジーネクさんとパーレニーチェクさんが展示のコンセプトや展示作品の詳細を説明してくださいました。何でも2012年にチェコで大規模なチェコ・コミックについての展示が行われたそうなのですが、その後、チェコ国外で今回ほどの長期にわたる大規模な展示が行われるのは、これが初めてとのこと。実は画期的な展示なんです。「チェコ・コミックの100年展」の詳細についてはこちらをご覧ください。

左がパヴェル・コジーネクさん、右がジャン・ガスパール・パーレニーチェクさん

1階でひとしきり展示を眺めたあとは、2階閲覧室に移動。

2階閲覧室の様子

今回の展示に合わせ取り寄せられたチェコ・コミックの原書をみんなで眺めつつ、あーでもない、こーでもないと議論します。

テーブルの上に並べられたチェコ・コミック1

テーブルの上に並べられたチェコ・コミック2

既に邦訳されている、チェコ・コミックや関連の絵本もあったりします。

オンドジェイ セコラ『ありのフェルダ』(関沢明子訳、福音館書店、2008年)

『貴重なチェコの童話』。チェコ国内でしか手に入らないというまさに“貴重な”邦訳

最後に、コジーネクさんとパーレニーチェクさんのお二人に、世界のマンガについてゆるーく考える会恒例の、おすすめ作品のプレゼンをしてもらいました。

パーレニーチェクさんがまずおすすめしてくれたのは、チェコ・コミックそのものではありませんが、「チェコ・コミックの100年展」の監修者であるコジーネクさんとトマ-シュ・プロクーペックさんが執筆に関わったというチェコ・コミックの歴史書(Dějiny československého komiksu 20. století, Akropolis, 2014)。2冊から成る大部の本編と1冊の付録がついた3冊組で、これだけ読めばチェコ・コミックはバッチリという代物です。いつか翻訳される日が来るといいのですが……。

第1巻

第2巻

続いて、パーレニーチェクさんのコミックのおすすめ。ダン・チェルニーという作家の『ファノーシュ』という作品で、“少年ゴーストバスターズ”とでも言うべき内容とのこと。たいていの回で、オバケの専門家である11歳の少年が、セクシーな美女に憑りついた悪霊を退治するという、マンガはかくあるべきという作品です。

本を紹介するパーレニーチェクさん

ダン・チェルニー『ファノーシュ』

続いて、コジーネクさんがおすすめしてくれたのは、カレル・イェリエの『カンディード』。そう、18世紀に活躍したフランスの哲学者ヴォルテールの有名な小説『カンディード』をマンガ化した作品です。コジーネクさんによれば、文学をマンガ化した作品はチェコ・コミックに少なくないそうですが、この作品は単なるマンガ化ではなく、そこにオリジナルな工夫を加えた、文学とマンガの関係を考える上でも好例となる作品であるとのこと。このカレル・イェリエの原画は、「チェコ・コミックの100年展」の第2期(10月27日[金]~11月20日[日])で展示されるそうですよ。

本を紹介するコジーネクさん

カレル・イェリエ『カンディード』

最後にコジーネクさんに、フランス語圏ではマンガのことを“バンド・デシネ”と言い、イタリアでは“フメット”、“フメッティ”などと言ったりもするのに、どうしてチェコでは“コミック”という英語を用いているのか聞いてみました。その質問に答えるには30分は必要だとのことだったのですが(笑)、手短に答えるとすると、“コミック”という言葉は、まず英語圏のコミックがチェコに入ってきたときに定着し、その後、その時々の体制に応じて、何度も浮き沈みを味わってきた言葉なんだとか。この言葉には、西側のものだという軽佻浮薄さがつきまという一方で、さまざまな内憂外患に耐えたチェコの自由への思いが込められているとのことでした。なんと、そんなニュアンスが! 目から鱗とはこのことです。

ということで、予定より30分オーバーして、「世界のマンガについてゆるーく考える会 出張版:チェコ・コミック編」は終会となりました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

次回については改めて告知いたしますが、11月13日(水)19時~21時で「世界のマンガについてゆるーく考える会#9」を予定しています。11月は海外マンガフェスタやブレイブ&ボールドといった大型イベントが目白押しですが、それらに臨む前のウォーミングアップがてら、ぜひご参加ください。「世界のマンガについてゆるーく考える会」は、未参加の方、海外マンガ初心者の方、大歓迎のイベントです。どうしようと悩んでいる方、ぜひ気軽にご参加ください。

About Author

原 正人

1974年静岡県生まれ。フランスのマンガ“バンド・デシネ”の翻訳者。訳書にバスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』(小学館集英社プロダクション)、マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット『かわいい闇』(河出書房新社)など。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』(玄光社)がある。「世界のマンガについてゆるーく考える会」主宰。もちろん日本のマンガも大好き。

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