台湾漫画の軌跡をたどる!台北漫画基地の全面協力による台湾漫画入門

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台湾というと、タピオカミルクティーやマンゴーかき氷などのスイーツや『千と千尋の神隠し』のような情景を味わえる「九份」などの観光スポットが人気ですが、海外マンガ好きの私たちは、台湾漫画を忘れてはいけません!台北に新たにできた漫画基地のご協力のもと、台湾漫画入門スタートです!

台北駅から徒歩5分の華陰街に、2019年1月24日「漫画基地(漫畫基地)」が正式オープンしました。台湾の政府機関である「文化部」が、台湾の漫画産業を育成し、台湾の漫画家が世界へ羽ばたく“ベース”となる場所を目指して作った施設です。一般の人々に向けては台湾漫画の認知を広める展覧会やカンファレンスを開き、作家向けには創作空間として工房などを提供しています。

漫画基地オープン記念展「台湾漫画六十」

その漫画基地で、オープン翌日の1月25日から2月28日にかけて、台湾漫画の歴史を紹介する「台湾漫画六十」と題した展示が行われました。
今回、現地関係者の皆様のご好意により、Comic Streetに展示素材をご提供いただきました。
台湾漫画の入門として、すごく参考になると思います。どうぞご覧ください!

漫画基地1階の様子
漫画基地の場所はだいたいこの辺(★)です
カフェコーナーも併設

台湾漫画六十 − 軌跡をたどる / TC 60  − Finding Tracks 展示紹介

「台湾漫画六十」は、1958年の《諸葛四郎》から2018年の最新作まで、60年間に及ぶ台湾の漫画作品を展示している。サブタイトルの「軌跡をたどる」には、「台湾漫画が発展した年代ごとの軌跡をたどること」と「クリエイターたちの創作過程という軌跡を発掘すること」の二つの意味を込めた。そのため展示内容も、年代順に「時代の特徴」を紹介した展示と、個々の作家による「軌跡」の展示から構成されている。

2階(A〜C区)は1950年代の作品から2018年の連載作品まで年代を追って展示、3階は台北城、歴史、社会問題、宗教信仰、そして都市生活というテーマに分け、新世代の作家による作品を紹介した。

ARアプリも提供されている

年代ごとの特徴

1950年代は、劉興欽(リュウ・シンチン)、葉宏甲(イエ・ホンジャ)、陳定國(チェン・ディングオ)などの「雑誌連載作家」、そして牛哥(ニュウ・グ)、梁又銘(リャン・ヨウミン)などの「新聞連載作家」が生まれ、台湾漫画は発展し、ゆっくりと規模を拡大していった。

1960年代に入ると、台湾漫画は様々な方向へと枝分かれし、多様なカテゴリーが生まれた。その中でも特に、武侠漫画が多くの人気を集めた。 (A区)

1970年代前後は、「編印連環圖畫輔導辦法」という漫画審査制度によって、台湾漫画は苦しい時代を迎え、いわば漫画創作の「断層」を作り出してしまった。

「漫画審査制」の解説など

しかし、1980年代の台湾漫画は、再び新たな繁栄を迎えた。多くの漫画家が新人賞に鼓舞され創作を開始、そして使命感をもって、台湾漫画を国内外の読者に注目させたいと考えた。 (B区)

1980年代に蘇った台湾漫画は、1990年代に入ると漫画雑誌が大量に市場に流れ込み、漫画という「産業」に変化していく。多くの漫画家は雑誌という舞台を持ち、収入は安定し、彼らの創作能力も留まることがなかった。(C区)

台湾の漫画雑誌
台湾の漫画雑誌

しかしその後、デジタル化の波は紙本の出版市場に衝撃を与え、マルチメディア・エンターテインメントの時代は、消費者の選択を多様化させた。漫画だけではもはや優勢とは言えず、多角的な発展を求める21世紀の漫画家たちは、コンピュータ技術、オンライン・ソーシャル・プラットフォーム、業界横断的なコラボレーションを組み合わせた、より多彩なビジネス手法へと発展した。

そのひとつとして、商業出版だけに頼らないという点が挙げられる。一部のクリエイターたちは、同人創作の空間に発展と生存の機会を見出している。彼らの創作エネルギーは、すでに長い間、台湾漫画にとって大きな栄養素になり続けている。

二つ目は、創作テーマがもはや制限されないという点である。思想が押さえつけられた過去の審査時代とは異なり、民主化の中で育った新しいクリエイターたちは、自分の思想を表現する勇気を持ち、生み出すテーマは自由にあふれている。自分たちが育った周囲の環境や歴史について、自ら振り返って考えるという試みも広がり、地元をテーマにした作品や、社会や政治批判を含んだ作品なども数多く出現している。(D区、E区)

道教の女神をモチーフに生まれた萌えキャラ「林默娘」など
漫画で散策する台北城

エリア別紹介

A区:昔の漫画、新しい創意

1950〜60年代の漫画を、新しい技術を用いた再パッケージを行った。これにより、現代の読者が、昔の漫画にも興味を持ってもらえればと期待する。なかでも、葉宏甲の《諸葛四郎》と劉興欽の《阿三哥與大嬸婆》は、特に注目していただきたい。原稿の展示以外に、諸葛四郎の布袋劇人形、阿三哥のポストカードなど周辺グッズも見ることができる。新技術との組み合わせでは、3Dキャラクターのディスプレイ、スロットマシン、シューティングゲームなどを提供している。

昔の漫画、新しい創意

B区:新人を輩出する漫画賞

1980年頃、台湾出版社は新人漫画賞を開始、多くの台湾漫画界の新星を育てた。このエリアでは、漫画賞デビュー作家や当時有名になった作家7名を紹介する。日本作品風の少女漫画、中国故事の色彩を感じる作品、作画技法や芸術表現において高い評価を受ける作品もある。この時代の漫画家たちは、1990年代に再びやってくる台湾漫画の黄金期を牽引し、多くの貢献をしている。

C区:百花斉放の漫画誌

ショーケースの中には、過去の海賊版時代の漫画雑誌、そして1992年の著作権法改正後に正規にライセンスされた日本の漫画や台湾オリジナルの漫画雑誌を展示してある。
壁には、主要な漫画雑誌における代表的な作家を展示した。

例えば、
東立の常勝、蔡鴻忠、李崇萍、依歡
尖端の顆粒、林青慧、陳漢玲
台湾角川の葉明軒など。

21世紀に入ると、台湾漫画は台湾「ローカル」の傾向が色濃くなる。政治、社会、文化、環境の変化に伴い、様々な「社会性」テーマが現れた。過去の台湾漫画は、「中国」を中心とした政治意識の影響を受けており、「台湾」らしさはほとんど見られなかったと言える。しかし、台湾の民主化に伴い、漫画創作のトピックは、社会文化とより密接に結合するようになった。

D区:台北城を散策する

漫画基地を中心として、大稻埕、建成圓環、西門、台北駅などの周囲の観光スポットを描いた台湾漫画作品を紹介している。日本植民地時代の台北城を描いた作品《北城百畫帖》や1980年代の懐かしい台北市を描いた《80年代事件簿》などがある。

E区:台湾漫画の新世紀

このエリアは、歴史、民間信仰、都市生活、社会問題という4つのサブテーマに分かれ、新世紀の漫画家が生み出す「テーマの自由さ」や「多元的な特色」を紹介している。同時に作家たちが創作を行った軌跡をたどることで、創作者の発展過程を眺めることもできる。

テーマの多様性という点で例を挙げると、《蘭人異聞錄》は、17世紀初頭を舞台に、オランダ人、日本人、そして漢民族が台湾にやってきて、シラヤ原住民と力くらべをする。消防士の労働状態を危惧する《火人》は、「社会運動を起こすために漫画を利用した」作品と言えるかもしれない。また、台湾の民間信仰、客家文化と原住民の伝説が融合した《無常鬼》、台北の地下鉄で出会った人々による物語《一起搭捷運,好嗎?》のような作品もある。

そして、新世代の台湾漫画家にとって、同人誌の空間が、特に重要であることに言及したい。同人創作から商業漫画、Web漫画など様々な媒体で活躍するクリエイターも紹介している。


いかがでしたでしょうか?

台湾漫画がどのような背景で発展してきたか、概要はお伝えできたかと思います。「台湾漫画六十」の展示はすでに終了しておりますが、漫画基地では様々な企画を準備されていますので、台北にお越しの際には、ぜひ漫画基地にもお立ち寄りいただき、台湾漫画の魅力に触れてください!

台湾漫画基地

住所 台北市大同區華陰街36、38号
電話 +886 2 2555-3155
日本語版ウェブサイト https://tcb.culture.tw/?lang=ja

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About Author

平柳竜樹(TK)

1977年東京都豊島区生まれ。テレビ番組のナレーション、システム企業での新規事業立ち上げ、ベンチャー企業のスタートアップや事業再生のサポート業務を経て、2009年よりデジタルカタパルト株式会社に参加、2012年取締役就任。現在は、海外のブックフェアや出版社を巡る仕事が中心。一度、海外出張に出ると、なかなか日本に帰ってこないため、「マグロ漁船にでも乗ってるようですね。」と言われる。

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