アメコミ入門 – 第5回 スーパーヒーロー・コミックの共有宇宙

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2017年はDCコミックスの人気キャラクターが勢揃いした『ジャスティス・リーグ』が劇場用映画として世界中で公開されました。さらに2018年にはマーベル・コミックスのオールスター総出演の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開される予定で、アメコミ原作のスーパーヒーロー映画はこれまでになく賑やかな様相を見せています。

『ジャスティス・リーグ』の劇場用パンフレット

このように各コミック出版社の人気キャラクターが一堂に会する物語は、スーパーヒーローを題材にしたアメコミの華と言える存在で、ジャスティス・リーグにはスーパーマンやバットマン、アベンジャーズにはキャプテン・アメリカやアイアンマンといった人気キャラクターが登場します(チームに不参加の時期やオブザーバー等の参加の場合もあります)。

映画『ジャスティス・リーグ』と『アベンジャーズ』の原作コミック

いま例に挙げた4人のキャラクターは、各々が主人公である連載コミック『スーパーマン』や『インビンシブル・アイアンマン』等を持っていますが、同時にジャスティス・リーグやアベンジャーズといったヒーロー・チームを主体にした連載コミックの登場人物でもあります。

チームの構成員それぞれが主役になっているコミック

これを可能にしているのが、複数のコミック作品で同じ世界を共有するという共有世界(シェアード・ユニバース)の存在です。簡単に言うと「キャプテン・アメリカが犯罪者を追いかけている近所でスパイダーマンが朝食を食べている」といった事がありえる世界、そのような概念のことです。

たくさんのヒーロー達が共存する世界

このような概念がアメコミの世界に広まっていったのは「あの2大ヒーローがの夢の競演!」といった主にコミックスの話題作りの側面があったからですが、それが様々な形で常態化して行った結果、共有世界は現在のような確固とした世界観にまで成長して行きました(中には厳密な世界観を設定しない作品もあります)。

継続的でない特殊な共有世界で描かれる作品も存在する

こういったヒーロー達の共演には、キャラクター同士の交流を物語の中で展開できるのと同時に、特定の連載コミックの読者をそれとは別のコミックへと呼び込む作用がありました。この事を考える場合、アメリカのスーパーヒーローものを中心としたコミックブックは、日本のマンガ雑誌のように1冊の中にたくさんの作品が掲載されているものばかりではないことにも留意すべきでしょう。

複数のヒーローがチームを組んで活躍するコミックもあれば、それぞれのヒーローが並列して活躍するコミックもある

さらにこの方式を用いると、1人でコミックの主役を担当させる事が難しいキャラクターを常時チームに参加させることで、彼ら(彼女ら)が活躍する機会を与えることができ、さらにはチームとしての商品価値を付与したり維持したりすることができます。また他の出版社からまとめて買い上げて来たキャラクターを活躍させたり、それらを元からいた自社キャラクターと馴染ませたりできるという効果もありました。

他の出版社からDCコミックス、マーベルコミックスのヒーローチームに編入されたキャラクター達

当然スーパーヒーロー物のコミックを中心に出版するDCコミックスやマーベル・コミックスなどの作品にも、これらの共有された世界の中に含まれない独立した作品も存在します。さらに共有世界は出版社ごとに独立したものですから、あるコミックス社の展開している共有世界に宇宙規模の大災害が起きても、他社の共有世界には何ら影響が無いのが普通です(まれに例外的な作品も存在します)。

出版社の中でも現在進行中の中心的な共有世界に含まれないコミック

またアメリカのマンガも日本のそれと同様に、連載作品のそれぞれの中にたくさんの物語や物語背景、複雑な設定や美術が含まれています。その中で全ての物語の整合性を取りながら、キャラクターを共演させるのは大変骨の折れる仕事です。コミック出版社のいくつかの中には、大掛かりな共有世界の構想を立ち上げてはみたものの、途中で断念したケースもあります。

共有世界設定をやめた、あるいは限定的にやめたコミック

このような共有世界という概念は、フィクションの世界で古くから用いられていた方法で、スーパーヒーロー・コミック登場以前の映像作品や文学作品の中でも大いに用いられてきました。さらに大本を辿れば全く出自の異なる神々を他の物語に共存させる神話や伝説の存在があります。スーパーヒーロー・コミックがしばしば「現代の神話」に例えられるのには、各々の作品が古典的な英雄物語にその骨子を持つという理由以外にも、そのような共有世界の存在が大きく影響していると言えるでしょう。

それぞれ独特の共有世界を持つ小説をベースに描かれたコミック


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About Author

うしおだ きょうじ

フリーのイラストレーター、一方でライター業などイラスト以外の仕事も多い。 新旧問わずマンガと名のつくものは大体好きで、マンガを読むのと散歩が日課。 海外のマンガとは何かと縁があって、子供の頃から良い付き合いをさせてもらっている。 ペット、引っ越し、ランニング、この3つの内どれか1つくらい何とかしたいと5年ほど前から計画中。 だけど計画するだけ。

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