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漫画イベントで何時間もの待機列に並びました。フランスでの話です。
2019年のアングレーム国際漫画祭のレポートです。バンド・デシネの聖地、漫画界のカンヌなどと表現されるこの漫画祭に一般参加者として乗り込んだら何が見られるのか、実際行ってきた人間の体験談をお届けしたいと思います。この記事では、漫画祭のメインである催し、出版社展示について紹介いたします。漫画祭の概要は、記事(1)をご覧ください。
1:出版社展示とは?

会場に設営された2つの特設会場に、大小あらゆる規模のバンド・デシネ、コミック系出版社がそれぞれブースを出展します。ブースではその会社が出版しているバンド・デシネをもちろん購入できます。コミケなどとは違い会場限定グッズはあまり多くないようですが、その代わりに作家のサイン会が休みなく行われています。
各ブースは、企業にもよりますが平均的な書店の漫画コーナー程度の規模はあり、その会社で売っているメインの書籍はおよそ揃うため、そこだけで現在のラインナップを概ね把握できるものとなっています。人気作品や、これから売り出そうとしている新作は大きな広告がブース壁面に掲示されます。

会期中常に混雑し、特に週末は移動がままならないほどの盛況を見せます。何かとカタいイメージで語られがちなバンド・デシネですが、いざファンの集まりに身を投じてみると、どこか馴染みやすい雰囲気を感じます。平たく言えば、いわゆる「フランスの俺ら」といったところでしょうか。
2:2種類の会場
バンド・デシネ系出版社を主に規模で分類し、大~中堅出版社がル・モンド・デ・ビュル(Le monde des bulles)に、中小~オルタナティブ系と小規模出展がル・ヌーヴォー・モンド(Le nouveau monde)という会場にそれぞれまとめられています。この分類は現在のアングレーム国際漫画祭のどの回でも共通のようで、メジャーな作品・人気作家を探したければル・モンド・デ・ビュル、ややマイナーでも個性あふれる本と作家に巡り会いたい場合はル・ヌーヴォー・モンドに足を運ぶ、と目的によって2つを行き来する事になります。なお会場間は歩いて10分程度は離れているため、用事はそれぞれまとめて済ましてしまうのが良いでしょう。


ル・ヌーヴォー・モンドには、フランスの外から来ている出版ブースも見られました。ベルギー系、フィンランド系、ドイツ系、中国系など。(アジアの「マンガ」系出展は別の会場にもありました。記事(3)で紹介しています)
ほか、エロティック系のバンド・デシネを扱う専門の出版社もありました。

3:会場で出来る(やってきた)事
さて、ここまで一般論として漫画祭の雰囲気をざっくりと説明いたしました。以降は筆者が実際に何をしてきたかをより具体的に、体験を交えてご紹介いたします。
まず、企業ブースでは主に以下4つを会期中最大限行うようあらかじめ目的を設定してました。
(1)追っているシリーズの新刊と、すでに気になっているシリーズを買う
(2)面白そうなバンド・デシネの新規開拓をしてみる
(3)好きな作家のサインを狙いに行く
(4)偶然出会ったサイン会にも都合が合えば参加してみる
(1)(3)は事前にリストを作り計画通りに、(2)(4)はその場の雰囲気で楽しむ狙いでした。特にサイン会は1回の待機時間が長いため、4日間で少しずつ狙えるよう計画しました。
ル・モンド・デ・ビュルでは、デルクール(Delcourt)、グレナ(Glénat)、ダルゴー(Dargaud)、などメジャー出版社をまず回ります。人混みの写真しか撮れていませんが、それだけ盛況だったという事でご容赦ください。


バンドデシネイベント名物「サイン会待ちが長すぎて地面に座り込むファンの皆さん」です
次に、規模は控えめながら最近注目している出版社も回ります。児童向けの良い作品を多く出しているカンヌ(Kennes)社、を見て、新刊と既刊シリーズをチェック。ついでに作家サイン会情報も入手しておきました。
アレックス・アリス「星々の城」の大ヒットで人気を集めるリュ・ドゥ・セヴル(Rue de Sèvres)社も寄ります。近年、漫画祭の公式セレクションにノミネートされる作品を多く輩出しており、平均して質が高い印象のある出版社です。個人的にはこの会社のバンドデシネにはお気に入りが多いです。


ル・ヌーヴォー・モンドに足を運び、中小・オルタナ系の作品も忘れずに漁りに行きました。この会場は小規模の会社から個人規模(コミケ・コミティアのサークル展示程度)まで幅広い出展があり、眺めているだけでも、フランス漫画界の広がりを実感することができます。
中国作品の仏訳を精力的に出版しているレ・ゼディション・フェイ(Les Éditions Fei)社や、グラフィックノベルに良作が多いラ・ボワット・ア・ビュル(La Boîte à Bulles)社をチェックしました。

各出版社のブースではサイン会スケジュールが掲示されているため、忘れずに写真に撮っておきます。リストを配布している会社も多いようです。
4:作家サイン会攻略
出版社ブースでは、先述の通り書籍の展示・販売と並行して作家サイン会が行われます。その参加方法と、攻略手順を紹介します。
まずはこちらの怪文書をご覧ください。

渡仏前に作った、サインを狙う作家のリストです。漫画祭会期中は、出版社ブース巡りや企画展示回りの合間にもサイン会を常に意識して立ち回れるよう、あらかじめまとめておきました。
漫画祭公式サイトに、サイン会を行う作家の情報がまとまっています。その中からお気に入りの作家を探し、どの出版社ブースに何日何時にくるか事前に調べました。現地ファンもサイン狙いで来ている方々も、同じように事前にリストなり攻略チャートなりを準備している人が多かったように思います。国が変われど人のやることはそれほど変わらないのだと言えます。

サインのもらい方は、目当ての作家の本を買うか持参して持っていき、時間になったらブースに行って列に並び、順番が来たら作者にお願いする、これだけです。出版社ブースではその時サイン会を行っている作家がいれば案内があります。特定の作家からサインが欲しい!という特殊な要望をあらかじめ持っていなければ、目についたところでふらっと参加してみると良いかもしれません。
人気作家のサイン会は、朝の会場直後か開始数時間前に整理券の配布(先着)ないし参加権の抽選が行われます。運よく参加権が得られたら、開始時間より早めに待機します。作家によりますが、大体とても丁寧に描いてくれる事もあり1件あたり5~10分の時間を要するため、時間制限で締め切られないよう注意が必要です。

作家サイン会の待機列は自分の番が来るまでひたすら待ち続けるだけなのですが、同じ参加者同士の会話に耳を傾けてみると、お勧め作品の情報交換、もらったサイン自慢、感想・議論などが聞こえてきます。直接会話に参加することはあまりできませんでしたが、ファンの熱意を感じることができました。

順番が来たら、簡単なリクエストを伝えてイラストを描いてもらいます。目当てにするのが思い入れのある作家であれば、待機中に準備をしておくとよりスムーズに思いのたけをぶつけられます。なお、日本からわざわざ来た事を伝えると、ほぼ間違いなくびっくりされます。

下の絵はリクエストをした上でもらったイラストの例です。これは、カリム・フリハ(Karim Friha)という作家に「新作の主人公と前作の主人公をコラボレーションさせてください」と依頼したものです。リクエストが重い。

5:戦利品紹介
そんな経緯を経て、今回のアングレーム国際漫画祭で得たサインを一部紹介させていただきます。





クリステル・ハン(Christél Han)さん:イラスト



アルノー・ポワトゥヴァン(Arnaud Poitevin)さん:イラスト


目の前で自分向けのイラストを描いてもらえるというのは、なかなか得難い体験です。もしアングレームに参加する機会を得られた際は、サイン会への参加も挑戦することをお勧めいたします。
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