アメリカの「オタク」たちの祭典「オタコン」(Otakon)に行ってきた(1)

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アジア発のポップカルチャーを中心にファンたちが集う北米最大級のイベントのひとつ「オタコン」(Otakon)。ここ数年はメリーランド州バルチモアで行われていたオタコンですが、2017年は、会場をワシントンD.C.に移し、ダウンタウンにある「ウォルター・E・ワシントン」というコンベンション・センターと、隣接するホテル「マリオット」で開催されました。真夏の強い日差しの中、ニューヨークから(途中休憩を入れて)4時間ほど車を走らせ、8月11日から13日までの3日間、アメリカのファンたちの熱気で沸くオタコンに参加しました。

ここでは、今回と次回の2回にわけて、その様子を報告したいと思います。

「オタコン 2017」のプログラム

 

会場のエントランス

オタコンの正式名称は、「オタコン: オタク・ジェネレーションのコンベンション」。その名の通り、北米の「オタク世代」が作り上げてきたものです。1994年にペンシルバニア州ステイト・カレッジで始まったこのイベントは、今年でもう24年目。会場に設置された「オタ・ミュージアム」でその歴史を知ることができます。初回はスタッフ16人、参加者350人の小さなイベントでしたが、今ではスタッフ350人以上、参加者2万5千人から3万人を集める巨大イベントに成長しています。オタコン会場の総使用面積は約21万平メートル。東京ドームの5個分ほどの面積を使っており、会場に集まる大勢の人を見事にさばいていました。若い女性の参加者からは「バルチモアに比べて、D.C.は治安がいいので安心」という声もあり、参加者にはおおむね好評のようでした。

オタ・ミュージアム

各回のプログラムとともにオタコンの歴史が通覧できる

他の北米のコンベンションと同様に、オタコンでは、アニメや映画を流し続ける「ビデオ・ルーム」から、様々な新旧のビデオ・ゲームを体験できる巨大ホール、マンガからDVD、Tシャツ、コスプレ用の武器(の模型)などを売るお店が並ぶ 「ディーラーズ・ルーム」、アーティストたちが自らのイラスト作品やポスター、グッズを売る「アーティスト・アレイ」、コスプレイヤーたちの晴れ舞台「マスカレイド(舞踏会)」まで多種多様なイベントが目白押し。さらには招待ゲストたちのトークやアニメ上映、そしてポピュラー・カルチャーについてのレクチャーや情報が得られるパネルが400以上もあり、3日ではとても回りきれない規模です。

「サイボーグ」についてのパネル

プリクラに並ぶ参加者たち

コア・ファンの熱意はとにかくアツイ! 朝から深夜過ぎまでイベントが目白押しで、 ヘトヘトになって座り込む参加者も。夜中になると、BLマンガ/アニメの特集パネルなども設置され、「大人」のイベントへと様変わりします(入場するには、身分証明書を見せて年齢確認が必要。「大人」のイベントに参加できるリストバンドがもらえます)。

巨大なディーラーズ・ルーム

アニソン・ワールド・祭り」の広告

オタコンは「アジア」のポップカルチャーを祝う祭典と銘打っていますが、中心を占めるのは日本発のポップカルチャー。ディーラーズ・ルームでは、K-pop関連のグッズやポスターを売るお店も見つけましたが、ちょっと肩身が狭そう・・・。今年の目玉の「アニソン・ワールド・祭り」では、JAM PROJECTやFLOW、妖精帝國、T.M. REVOLUTIONなどの日本のミュージシャンがフィーチャーされ、観客を魅了していました。他にも、日米のポップカルチャーの生産に携わるアーティスト/クリエイターからプロデューサー、芸能、コスプレイヤー、声優などの方々まで、多彩なゲストが招待されていました。中でも、話題になっていたのは、アメリカの主要都市で上映が始まったばかりの片渕須直監督『この世界の片隅に』(2016年)。会場には、プロデューサーの丸山正雄氏と作画担当の松原秀典氏も参加しており、観客からの質問に丁寧に答えていました。

カメラに向かってポーズを取るコスプレイヤーたち

会場でひときわ目立っていたコスプレイヤー

北米の「コンベンション」参加者なら、おそらくご存知のように、会場周辺もお祭りモード。コンベンション・センターの前にある教会や小さな公園では、同じ作品のコスプレイヤー同士が集まるオフ会がひらかれており、 カメラマンの前でポーズをとるコスプレイヤーたちの撮影会があちこちで行われていました。また、コンベンション・センター周辺のカフェや地下鉄の中では、「マリオ」と「ワンダー・ウーマン」や「エドワード・エルリック」(『鋼の錬金術師』)と「ハーレイ・クイン」(『スーサイド・スクワット』)がお茶をしている姿など、「マーベル・ユニヴァース」ならぬ、独自の「オタコン・ユニヴァース」を作り上げており、なかなか日本では見られない光景が楽しめます。

アメコミ・ファンもたくさん参加

とてもクリエイティブなコスプレイヤー

こうしたイベントの活力は「クール・ジャパン」といった日本政府主導のトップ・ダウンで企画されるイベントではなく、アメリカにいるファンたちがボトム・アップに作り上げてきたところにあると思います。300人以上にのぼるスタッフたちはすべてボランティアで活動しており、まさに、「愛の労働(labor of love)」(=無償の労働)でイベントが成り立っています。アメリカのオタク/ファンたちは日本で(かつては?)「オタク」という言葉に否定的なイメージがあるのを知っていますが、トランスナショナルな視点からオタコンを眺めてみると、その活動と歴史は、「オタク」という言葉の否定的なイメージをかぎりなく希薄化させてきたと言えるのではないでしょうか。国境や民族、文化を越えて、ポピュラー・カルチャーを中心にして集まる新たなサブカルチュラルなコミュニティを作り上げてきたのは、 「オタク世代」の草の根的なネットワークと組織力でしょう。

次回は「オタコン」のもうひとつの側面である教育的・文化交流的な側面に焦点を当ててみたいと思います。


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About Author

CJ・スズキ

愛知県生まれ、現在アメリカのニューヨーク在住。メインストリームのアメコミ作家からオルタナ系のアーティストをはじめ、世界中からさまざまなジャンルやバックグラウンドのアーティストが集まる刺激的な都市、ニューヨークで、日本と北米のマンガを中心に研究しています。映像作家/大学講師であるジョージ・ツーリス(George Tsouris)とともに「Manga Research and Reading Network in NYC (MaRRN)」を主宰。

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