「海外マンガフェスタ2018」レポート(5)

Google+ Pinterest LinkedIn Tumblr +

関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(1)
関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(2)
関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(3)
関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(4)


茨城大学人文社会科学部「視覚表現論(H30)」(担当教員:猪俣紀子)を受講する大学生チームがお送りする「海外マンガフェスタ2018」レポート。最終の第5弾となる今回は、体験ブースとアーティストアレイについて紹介します。

ペンタブレット de アートコンテスト

私たちがまず向かったのは、株式会社WACOM季刊エス共催の、「第12回ペンタブレット de アートコンテスト」作品展示・投票会場ブースです。WACOMは、「一人ひとりが新しいアイデアを自由に追求できること、そしてクリエイティビティにあふれた活き活きとした世界」を理念としていて、イラストやデザインに向いたタブレット、アプリ等の開発を主に手掛けています。季刊エスは、ストーリー&キャラクター表現の総合誌です。漫画・イラスト・アニメ・ゲーム・映画・舞台・写真など、クロスジャンルな世界を紹介しながら、物語とビジュアル表現をレポートしています。

ブース入り口付近
作品展示付近

「第12回ペンタブレット de アートコンテスト」作品展示・投票会場ブースでは、WACOMと季刊エスが毎年共催しているイラストコンテストに応募された作品が展示されていました。海外マンガフェスタ参加者は投票用紙を受け取って、良いと思った作品を最大3つまで選んで投票することができます。コンテストの応募条件は「作品の工程の中でペンタブレットを使用していること」のみで、それを満たしていればプロ・アマチュア問わず応募できます。多種多様な作品が展示されていてびっくりしたのですが、これだけ多くの作品が集まる要因のひとつとして応募条件の自由さが挙げられるのではないかと感じました。背景の細部まで凝った作品、配色が工夫された作品、リアルさを追求した作品など、間近で作品を見ることでそれぞれどこにこだわって描かれたのかが分かりました。私たちも投票用紙を受け取り、悩みに悩んで3作品を選びました。展示品を通じてペンタブレットの無限の可能性を感じました。

執筆者の一人が投票した作品 その1

執筆者の一人が投票した作品 その 2

執筆者の一人が投票した作品 その 3

なお、コンテストで入賞した作品は、発売中の季刊エス64号に掲載されています(季刊エスのWebサイト上にも結果発表ページがあります)。興味のある方はぜひ確認してみてください。

FUN’S PROJECTの体験ブース

続いて、私たちはFUN’S PROJECTブースに向かいました。「FUN’S PROJECT」とは、DNP大日本印刷によるクリエイティブ業界への貢献を目的としたクリエイター共創サービスの総称です。今回は当プロジェクトの一部である東京アニメセンターのVRコンテンツ体験ブースが設けられていて、私たちも実際に体験しました。

体験したVRコンテンツは「Virtual Gallery」というVRで展示物を見ることのできるアプリです。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を付けることで、机一つ分のスペースで美術館を周っているような体験をすることができます。空間の移動は手に持つコントローラーで行います。操作が少し難しく戸惑ってしまいましたが、本当の美術館を歩いているような臨場感がありました。最も驚いたことは「作品を手に持つことができる」ということです。現実の展示会では触ることが難しい作品を持ち、あらゆる角度から観賞することができます。持って見ることにより飾られているだけでは気がつかなかった細部の描写も、はっきりと分かることができました。実際に、今回飾られていた絵には絵の裏側にタイトルが書かれているという、持つことを想定した仕掛けがありました。

アーティストアレイで突撃インタビュー

FUN’S PROJECTのブースを後にした私たちは、続いてアーティストアレイを見て回りました。アーティストアレイには様々な世界観を持つ作品が並び、たくさんの参加者と出展者が買い物や会話を楽しむ様子が見られました。その中で、私たちが特に気になった4人の出展者の方々にお話を伺いました。

①モクタン・アンジェロさん

まずお話を伺ったのは、モノクロを基調とした作品が特徴的である、ブラジル出身のマンガ家のモクタン・アンジェロさんです。モクタンさんは、14歳のとき日本のマンガに感銘を受けてマンガ家を志します。マンガと日本語の勉強や日本への留学、コミックマーケットでの作品販売などを経て、2015年にマンガ家としてデビューを果たしました。ちなみに過去にComic Streetでもインタビューを受けています。

モクタン・アンジェロさん
モクタンさんの名刺に描かれたイラスト

モクタンさんは作品がモノクロであることにこだわりを持っているそうです。名前のモクタンも日本語の「木炭」を意識しているとのことでした。「作者として、白黒二色のみでいかに明暗や雰囲気を表現するかが最初は難しいけど、面白いチャレンジだ」「多くのアメコミやバンド・デシネとは異なり、(モノクロの手法が)あまり使われてないので面白く、変わった結果になる」と話されていました。また、モクタンさんは、読者に想像しながら作品を読んで欲しいことを最も強く主張していました。「自分の作品は一方的に伝えるものではなく、フィードバックがあって初めて完成される」というモクタンさんの言葉から、読者と共に作品を作り上げたいという熱い想いが伝わってきました。実際に、今回海外マンガフェスタに初めて出された作品『レオノーラの猛獣刑』でも読者から「(モノクロの手法が)この作品のテーマである“怒り”にとても合っている。雰囲気が良い」とフィードバックがあり、「言われて初めて気づいた」「作品が完成した」と感じたそうです。

②ジュリア・ナシメント(Julia Nascimento)さん&フェリッペ・コルブ・ベルナルデス(Felipe Kolb Bernardes)さん

続いて筆者たちがお話を伺ったのは、ジュリア・ナシメント(Julia Nascimento)さんとフェリッペ・コルブ・ベルナルデス(Felipe Kolb Bernardes)さんです。「97%事実!」というキャッチコピーとコミカルな絵柄が目に留まりました。このお二人はなんと夫婦で活動されていて、滞在した地での実録マンガや趣味の電車に関する作品などを描いているそうです。ジュリアさんとフェリッペさんそれぞれの作品が閲覧できるサイトもあります。

男性がフェリッペさん、女性がジュリアさん
目に留まったキャッチコピー

ジュリアさんが電車に興味を持ち、作品を描いた理由を聞いたところ、もともと住んでいた町には電車が一本しかなかったが、日本でたくさんの電車に出会ったことと、電車から見る景色や乗客の様子が面白かったことがきっかけだと話してくれました。またジュリアさんは、色がきれいという理由から電車の回数券を集めているのだそうです。そして、作品を作る際、ジュリアさんがストーリーやラフ、文章を担当し、フェリッペさんがキャラクターデザインやペン入れ、レイアウトを担当するというように、夫婦である程度分担をしているとのことです。特にフェリペさんはペン入れのとき筆ペンを使うことにこだわりを持っていて、「筆ペンは意外と描きやすく、線に味も出るので気に入っている。」と話されました。お二人は来年スウェーデンに引っ越すそうですが、スウェーデンでの生活も実録マンガとして描きたいという想いを伝えてくれました。夫婦で一つの作品を作ることは、とても素敵なことだなと思いました。

夫婦実録マンガ日本語版『フェイジュアーダコミックス』
電車に関する作品『TOKYO TRAIN BOOK』

③クリストファー・テイラー(Christopher Taylor)さん

次にお話を伺ったのは、マンガのほかにかわいらしいキャラクターのシールも販売していた、クリストファー・テイラー(Christopher Taylor)さんです。クリストファーさんはフリーランスでマンガを描いているほかに、ゲームのキャラクターデザインを手掛けたりウェブページの作成をしたりとクリエイティブな活動を数多くなされています。また、SketchFro!(スケッチフロ!)という名前でイラストやマンガに関するお仕事をしているそうです。

クリストファーさん(左側)と通訳の方(右側)
キャラクターのシール

今回クリストファーさんは『RIVEN』というファンタジーアドベンチャーマンガのシリーズを出品していました。このシリーズは、早撃ちで知られる主人公のRiven(リブン)が、大切なものの鍵となる「The Relics(レリック)」を求めるレリックハンターとして仲間と共に冒険する、ファンタジー作品です。クリストファーさん自身、週刊少年ジャンプの作家の方々に大きな影響を受けたとのことで、作品からは少年ジャンプを彷彿させる王道ファンタジーらしさが伝わってきました。

『RIVEN』シリーズ、本編とは主人公が異なる短編版やスピンオフ版もあるとのこと

クリストファーさんは、読者から得られる刺激や反応を新たな作品へ活かしていきたい、と想いを語っていました。

④ワルダー・ジョアン(Walder Johan)さん

最後にお話を伺ったのは、生き生きとしたタッチで描かれたキャラクターが印象的だったワルダー・ジョアン(Walder Johan)さんです。ワルダーさんはスイスのイラストレーターですが、ほかにもビデオゲームのキャラクターデザイナーやテレビアニメーションのレイアウトアーティストなど、様々なポジションで12年以上ご活躍されています。

ワルダーさん
ワルダーさんの作品

今回ワルダーさんは海外マンガフェスタに初参加だったため、その規模の大きさに感嘆していました。また、参加者の皆さんが恥ずかしがり屋でなかなかこちらに来て作品を触ってくれないため、もっと皆さんに触ってもらえたら嬉しいと仰っていました。

ワルダーさんが、絵を描くときに気を付けていることを具体的に聞いてみたところ、「常にキャラクターのボリュームと、身体や筋肉の動き方が3Dに見えるように描くことを、気をつけています。」と答えてくれました。確かにワルダーさんの作品からはある種のリアルさ、重厚感が伝わってきました。さらに、以前ヨーロッパで仕事をしていた時はヨーロッパ風の絵柄だったそうですが、今はもっと日本で仕事をしたいので、日本のアニメやマンガに近づけるように気をつけた、と話してくれました。その上で、「日本のスタイルはヨーロッパに比べてシンプル。ヨーロッパのコミックはアメリカのようにリアルな絵が多いので、日本のようにシンプルになるように心がけている」と、教えてくれました。

お話を伺った後、筆者の一人がワルダーさんの新刊『SKETCHBOOK』を購入すると、なんとサービスで表紙裏にイラストを描いていただきました。

購入した『SKETCHBOOK』
イラストを描くワルダーさん
描いていただいたイラスト

全5回でお送りした「海外マンガフェスタ2018」レポートも今回で終了です。レポートで取り上げきれなかったブースもありましたが、このイベントの全体像は伝えられたのではないかと思います。執筆者一同、海外マンガフェスタを通じて世界のマンガの様々な側面を感じることができ、大変有意義な時間でした。

(執筆:CN、YK、NN、RH、KI)


関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(1)
関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(2)
関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(3)
関連記事を読む:「海外マンガフェスタ2018」レポート(4)

About Author

茨城大学「視覚表現論(H30)」

茨城大学人文社会科学部の開講する平成30年度「視覚表現論」(担当教員:猪俣紀子)の受講生。3、4年生29名。バンド・デシネ作品の邦訳作品を読んで発表するなど、授業の中で海外マンガを取り扱っている。

Leave A Reply