「海外マンガフェスタ2018」レポート(3)

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茨城大学人文社会科学部「視覚表現論(H30)」(担当教員:猪俣紀子)を受講する大学生チームがお送りする「海外マンガフェスタ2018」レポート。第3弾となる今回は、マンガに関する学科を持つ高校・大学・専門学校が出展するManga Schoolエリア、フランスの3つのマンガ出版社KANA(カナ)社、Ki-oon(キューン)社、Glénat(グレナ)社の作品持込みブース、そして13時20分からメインステージにて行われたイギリス出身のアメコミ作家3名によるトークライブの様子についてお伝えしていきます。

Manga Schoolエリアへ

初めにManga Schoolエリアについて紹介します。こちらは、マンガやアニメ、イラストなどの制作を学ぶことができる高校や大学、専門学校が出展するエリアとなっていました。今回は、

○大阪総合デザイン専門学校
○専門学校日本デザイナー学院
○日本アニメ・マンガ専門学校
○文星芸術大学
○宝塚大学
○専門学校東京デザイナー学院
○国際アート&デザイン高等課程・大学校
○国際アート&デザイン大学校

の8校が参加していました。

それぞれの学校のブースでは、各校の特色や取り組み、そしてプロの作家としてデビューした卒業生・在校生の紹介や在校生の作品の展示が行われていました。今回私たちは、そのうち2校にインタビューを行いました。

Manga Schoolエリア

まずお話を伺ったのは文星芸術大学です。こちらは栃木県宇都宮市の私立大学で、3つの専攻の中から、設立されて13年となる「マンガ専攻」の方々がイベントに出展していました。学生たちは1年次で制作の基礎を学び、2年次に専攻を決定します。その後、実践的な作品制作を通して、各専門分野の学習を進めていきます。ブースでは大学を紹介するパンフレットの他にも大学内コミック誌を配布していました。コミック誌には学生たちの多種多様なマンガ作品がまとめられていて、大学で学んだ技術が伝わるものでした。また掲示されていたポスターには、作家としてプロデビューした卒業生や在校生たちが紹介されていました。

ブースでの頒布物
卒業生や在校生の活躍をまとめたポスター

文星芸術大学の展示の目玉は紙媒体のマンガを3Dで表現したVR作品です。こちらは来場者に公開されており、私たちも実際に体験することができました。その中では体験者の視線に合わせてセリフが表示されるといった、紙の書籍や電子書籍では実現できない、新しい形のマンガ表現に触れることができました。現在はマンガを現実世界に付加する拡張現実(Augmented Reality、AR)の研究も行っているそうで、実際に栃木県の那須町ではスマートフォン上に登場させたキャラクターを用いた観光地解説や写真撮影など、観光産業へ応用されているとのことでした。このように、文星芸術大学では技術の進歩と共に新しい表現を探求していく取り組みを進めているそうです。

次にお話を伺ったのは福島県郡山市にある国際アート&デザイン高等課程・大学校です。同校にはイラストレーション系の学科の他にも、デザインやCGの分野を扱うグラフィックデザイン科やCGアニメーション科、更には音響・ミュージック科、アニメ声優など、計10個の学科が設けられています。今回はその中からコミックイラスト科が出展していました。こちらのブースでは学校案内の他に、学生たちが制作したクリアファイルや絵葉書、バッジなどが全て無料で配布されていました。ブースにはそれらのグッズの製作を担当した学生たちもおり、自分たちの作品を楽しそうに配っていました。

ブースに置かれていたグッズ

また、国際アート&デザイン高等課程・大学校が主催する「ふくしまデザインコンテスト 2018」の紹介も行われていました。コンテストは福島県内の中学生の作品を対象としており、
○キャラクターイラスト部門
○ファッションデザイン部門
○ネイルデザイン部門
○4コマまんが部門
の計4部門が存在します。

ブース内には各部門の受賞作品が展示されていました。展示作品はどれも素晴らしく、中でも金賞を受賞している作品はとても魅力的でした。

「ふくしまデザインコンテスト 2018」キャラクターイラスト部門金賞作品

フランス出版社による持ち込みブース

続いてフランスの出版社が展開する作品持込みブースについてお伝えします。

こちらのブースではフランスの3つの出版社「KANA(カナ)」、「Ki-oon(キューン)」、「Glénat(グレナ)」の3社が机を並べ、一般参加者が持ち込んだマンガに対するアドバイスを行っていました。フランスから来た編集者の方には日本語通訳が付き、言葉の心配なくコミュニケーションできる体制を整えていました。パネルと机の上には各社の作品やポスターがディスプレイされ、魅力的なキャラクターたちが来場者を歓迎していました。

作品持込みブースの様子

バンド・デシネを扱う出版社の編集者の方から直接アドバイスをいただける機会とあって、たくさんの来場者が持ち込みのブースを訪れていました。

トークライブ アメコミアーティスト from UK

13時20分からは、メインステージにて、イギリス出身のアメコミ作家によるトークライブが行われました。登壇したのは『ウォーキング・デッド』で知られるイギリスの有名コミッククリエイターであるチャーリー・アドラード(Charlie Adlard)氏、『スリーパー』や『ヘルブレイザー』を描かれたショーン・フィリップス(Sean Phillips)氏、『ヘルボーイ』のイラストを担当するダンカン・フィグレド(Duncan Fegredo)氏。3人は1時間にわたって司会者やギャラリーの質問に答えました。

左からチャーリー氏、通訳の方、ショーン氏、ダンカン氏

初めに、3人はイギリスのコミック業界についてアメリカとの比較も交えて紹介しました。チャーリーさんよると、イギリスのコミック市場は小さいため、駆け出しのイギリスの作家は海外で仕事を探す必要があるそうです。また、アメリカン・コミックスは単一作品が収録されたコミックブックとして出版されるのが一般的なのに対し、イギリスのコミックは複数の作品がまとめられたアンソロジー形式で出版されることが多いそうです。製作現場についても、アメコミでは、脚本を担当するライター、下絵を描くペンシラー、彩色を行うカラリスト、といった分業制が敷かれていますが、イギリスでのコミック制作においては全工程を一人で行うことが多いそうです。ショーンさんも、イギリスでは締切の期間が長いため、週に5ページ仕上げれば良いが、月に1回刊行があるアメコミは一ヵ月に20~30ページも描かなければならないため大変、と話していました。

身振り手振りで話をしてくださったチャーリー氏

次に、3人は日本のことについて語りました。チャーリーさんは、概してイギリスではコミックは子どもが読むものとして扱われていることが多いが、日本では大人たちも自然にマンガを読んでいるのが素敵だ、と仰っていました。ダンカンさんは、来日は今回が初めてだったそうです。しかし、日本を舞台にしたゲームをプレイして街並みは知っていたことから、まるで以前にも来たことがある場所に訪れたような感覚がしたそうで、日本のことを大変気に入っているようでした。

その後、話題は映画のことに移りました。中でも、ダンカンさんは「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のストーリーボードアーティストを務めていたこともあり、そのことについての質問がありました。それに対してダンカンさんは、自身も影響を受けた「スター・ウォーズ」シリーズに関われたことが嬉しかったということ、また、描いたシーンがシャッフルされていたり、丸々無くなっていたりしたものもあった、という制作秘話も答えていました。

そして、それぞれが今まで関わった作品のなかで印象深いキャラクターなどを答えてくれたところで、トークライブイベントは終了しました。海外のマンガ業界の事情について、3人に共通する映画のことなど、多くの貴重な話が聞けた1時間でした。

Manga Schoolエリア、仏出版社持ち込みエリア、トークライブと、今まで触れてこなかったような視点からマンガ文化について取材したことで、より多様なマンガのあり方に触れることができたように感じました。

(KK、OM、RT 、TH、TO)

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茨城大学「視覚表現論(H30)」

茨城大学人文社会科学部の開講する平成30年度「視覚表現論」(担当教員:猪俣紀子)の受講生。3、4年生29名。バンド・デシネ作品の邦訳作品を読んで発表するなど、授業の中で海外マンガを取り扱っている。

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