「〈ケベック・バンド・デシネ〉を知っていますか?」展訪問レポート

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2017年12月9日(土)から京都国際マンガミュージアムでケベック・バンド・デシネの展示が開催されています。正式タイトルは、「〈ケベック・バンド・デシネ〉を知っていますか? ――25の足跡と7人の作家から」展。会期は2018年2月13日(火)までです。

ケベックはカナダ東部にあるフランス語のみを公用語にした州。したがってフランス語圏ということになり、そこにはバンド・デシネが存在します。

筆者のケベック・バンド・デシネについての知識は、「どうやらケベックにもバンド・デシネがあって、いろいろ出ているらしい」程度……。実はここ数年でも、イザベル・アルスノー絵、ファニー・ブリット文『ジェーンとキツネとわたし』(河野万里子訳、西村書店、2015年)とかジュヌヴィエーヴ・カストレイ『少女ゴーグル』(村上史子訳、プレスポップ、2016年)とか、ケベック産のバンド・デシネ=コミックスは邦訳されていたりするのですが、ケベック・バンド・デシネの全体像はさーっぱりわからん! ということで、行ってきました、京都国際マンガミュージアム。

元・龍池小学校校舎を改装したステキな建物。
烏丸御池駅2番出口を出てすぐですが、
2017/11/14~2018/1/12にかけて工事中のため、
現在は1番出口が最寄り

ミュージアムの入口はこちら

会場は2階の「ギャラリー4」。「は~るばる来たぜ~♫」とふと下を見ると、展覧会のタイトルが床に! なかなかかわいい作りです。

会場の「ギャラリー4」

床に記された展覧会タイトル

入口から見ると、こんな感じ。左のほうにもまだまだ展示が広がっています。

入口から見た会場の様子

まず、訪問客を迎えてくれるのは、ちょうど来日中のケベックの女性バンド・デシネ作家ズヴィアンヌ(Zviane)さんが、展覧会オープニングのライブドローイングイベントで2時間かけて描いたという一枚。バッハの音楽に合わせて描いたそうで、下が完成画、上にあるのがその設計図なのだとか。せ…設計図!? どんなライブドローイングだったのか、興味津々です。
※ズヴィアンヌさんの手もとを撮った映像を近日モニターで公開するとのこと。音楽に合わせライブドローイングをする様子をご覧いただけるそうです。

ズヴィアンヌさんがライブドローイングで描いた一枚

続いて、ケベック・バンド・デシネの歴史を25の足跡で説明した解説パネルならぬ、巨大解説巻物が登場! 手もとのハンドルをクルクル回すと、ケベック・バンド・デシネの歴史がまさにひも解かれていきます。手動で若干額に汗しながら勉強する感じがいいですね。これがまた内容的にコンパクトにまとまっていて、ぜひ冊子とかで手もとに置きたい感じなんですが、あいにくそういったものはありません……。ここはひとつ筆者が勉強して、このComic Streetで「ケベック・バンド・デシネ入門」を執筆してしまうか!? 乞うご期待です。まだ京都に滞在中のズヴィアンヌさんが駆けつけてくれ、即席のケベック・バンド・デシネ講義を開いてくれました。ズヴィアンヌさんはあと1カ月ほど日本に滞在するとのこと。もしかしたらあなたもどこかですれ違うかも!?

ケベック・バンド・デシネの歴史がわかる巨大巻物。
歴史が長くてびっくり

ズヴィアンヌさん。ご自身の本をたくさん出版している出版社Pow Pow(パウパウ)の解説の前で

本展は、ケベック・フランコフォン・バンド・デシネ・フェスティバル(Festival de la bande dessinée francophone de Québec)のジェネラル・マネージャーであるトマ-ルイ・コテ(Thomas-Louis Côté)さんの監修のもと、作成されたものだとか。

東京でお会いできたトマ‐ルイ・コテさん

トマ‐ルイさんが、ケベックを代表する7人のバンド・デシネ作家を選び、その作家たちの作品が展示されています。ケベックには大小さまざまの出版社があるそうで、7人の作家がそれぞれ、7つの出版社の代表というような見せ方になっているそうです。展示作家は以下の通り。

キャブ(Cab)
エスベ(Esbé)
ミシェル・ファラルド(Michel Falardeau)
パスカル・ジラール(Pascal Girard)
フィリップ・ジラール(Philippe Girard)
レアル・ゴドゥブ(Real Godbout)
ズヴィアンヌ(Zviane)

いかにもバンド・デシネなタンタン風のリーニュ・クレールで描いている作家さんもいれば、日本のマンガ・アニメの影響を受けていると思しい作家さんもいて、スタイルは7人7色。日本ではおそらくまだあまり知られていないであろうケベック・バンド・デシネの豊かさを垣間見ることができます。

レアル・ゴドゥブさんの作品。年明けにはレアル・ゴドゥブさんも来日してイベントが行われるそうです

フィリップ・ジラールさんの作品

パスカル・ジラールさんの作品

ズヴィアンヌさんの作品。遠目でわかりにくいですが、スタイルが実にさまざま。そして原稿ちっちゃ!
小さく描くのが好きなんですって

フランスやベルギーのバンド・デシネと同じく、ケベック・バンド・デシネも雑誌とともに発展してきました。会場の一角には、それらの雑誌の一端を知ることができる展示もあります。

ケベック・バンド・デシネの重要な雑誌『Croc(クロ:牙の意)』を中心にした歴史的な雑誌の展示

一番右はフランス=ベルギーでも大人気のケベック発のバンド・デシネ『Les Nombrils(直訳すると、「おへそたち」の意)』が表紙を飾ったベルギーの週刊誌『Spirou(スピルー)』

そして、ケベック・フランコフォン・バンド・デシネ・フェスティバルのプログラム(これがタブロイド判でかわいい!)が展示されているコーナーとケベック・バンド・デシネの原書を閲覧できるコーナーも。

ケベック・フランコフォン・バンド・デシネ・フェスティバルのプログラム。毎年春に行われ、次回なんと31回を迎えるという歴史あるフェスティバル

ケベック・バンド・デシネ閲覧コーナー

まだ日本で紹介が始まったばかりのケベック・バンド・デシネ。本展は、その知られざる豊かな世界を垣間見せてくれる貴重な機会です。関西にお住いの方や関西に旅行に行かれる方は、京都まで足を延ばして、覗いてみてはいかがでしょうか?

About Author

原 正人

1974年静岡県生まれ。フランスのマンガ“バンド・デシネ”の翻訳者。訳書にバスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』(小学館集英社プロダクション)、マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット『かわいい闇』(河出書房新社)など。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』(玄光社)がある。「世界のマンガについてゆるーく考える会」主宰。もちろん日本のマンガも大好き。

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